秘密保護法 言わねばならないこと(46)監視なき「秘密」指定 弁護士 海渡雄一氏 - 東京新聞(2015年7月21日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2015072102000181.html
http://megalodon.jp/2015-0722-0909-31/www.tokyo-np.co.jp/article/feature/himitsuhogo/iwaneba/list/CK2015072102000181.html

特定秘密保護法の運用状況をまとめた報告書が先月、初めて公表された。漏らすと厳罰を科せられる特定秘密に指定された情報の項目と件数だけが並び、秘密の内容どころか、一件の中にどれだけの情報が含まれるのかさえ、分からない。
これでは、特定秘密に当たらない情報が指定されてもチェックできない。監視機関は秘密指定をひっくり返して初めて機能したといえるのに、そうした事例も明らかにされていない。監視はないに等しい。
監視機関が秘密を解除し、その情報を見られれば、政府がくだらない情報を指定しようとしたかも分かるし、どんな情報を秘密にしているか類推もできる。
しかし、日本の監視機関は官僚組織で、身内のチェックには限界がある。国会にも情報監視審査会が設置されたが、運用改善の勧告はできても強制力はない。米国の場合、監視機関は政府組織のOBらが担い、元の組織には戻らない。だから、後輩がちゃんとやっているかどうか、一番よく分かるし、ちゃんとやっていないじゃないかと言える。
日本でも元内閣官房副長官補の柳沢協二氏が安全保障関連法案に反対している。日本の監視機関も元の役所に戻らないポストにすれば独立して判断できるのではないか。
安保法案は、何かが起こり、政府が存立危機事態と認定すれば、他国を武力で守る集団的自衛権を行使できる。国会で何が存立危機事態か議論されているが、そもそも、起こった出来事の中身を秘密にされる可能性がある。
「存立危機事態になりました。中身は特定秘密で言えません。でも、すぐ国会で承認してください」。そんなことを言い出しかねない。大きな声で日本の危機だと言うだけで、戦争を始められるようになる。

<かいど・ゆういち> 1955年生まれ。弁護士。著書に「何のための秘密保全法か」「秘密保護法対策マニュアル」など。