娘絞殺:「困窮、非難できず」減刑し懲役7年 千葉地裁 - 毎日新聞(2015年6月12日)

http://mainichi.jp/select/news/20150613k0000m040167000c.html
http://megalodon.jp/2015-0613-1338-41/mainichi.jp/select/news/20150613k0000m040167000c.html

生活に困窮して家賃を滞納し、県営住宅から強制退去させられる当日、中学2年の一人娘(当時13歳)を絞殺したとして、殺人罪などに問われた千葉県銚子市、パート従業員、松谷美花被告(44)の裁判員裁判で、千葉地裁は12日、懲役7年(求刑・懲役14年)の判決を言い渡した。佐々木一夫裁判長は「突然、仲の良かった母親に殺された被害者は誠にふびんだが、原因の全てが被告にあったとは言えない」と求刑の2分の1とした量刑の理由を説明した。
事件の経緯について佐々木裁判長は「身近に頼りにできる人もおらず長年困窮する中、自分が死ぬしかないという心境に追い込まれて強制退去の日を迎え、突発的に娘を殺害した」と指摘し、「被告を強く非難できない事情も認められる」と述べた。一方、同種事件の量刑と比較し「刑の執行を猶予する余地があるとは言い難い」とした。
判決によると、松谷被告は2014年9月24日午前9時ごろ、県営住宅の自室で長女の可純(かすみ)さんの首を絞めて殺害した。
被告は借金を抱えていた夫と離婚し、パートをしながら返済を続けたが、12年から家賃を滞納した。13年には娘の中学入学準備のためにヤミ金融から金を借りるまで困窮した。市に相談したこともあったが、生活保護は受けられなかった。【川名壮志】
銚子市長「今も断腸の思い」
閉廷後、審理に参加した6人の裁判員全員が記者会見した。松谷被告を自身に置き換えて考えたといい、30代の男性は「生活苦というキーワードがあった。同情する余地があるか考え、客観的に判断できた」と振り返った。別の男性は「市民的な感覚を出せたと思う」と語った。
千葉県は事情を調べないまま被告に県営住宅からの強制退去を求めた。生活保護の申請を受け付ける銚子市も、窓口を訪ねてきた被告から詳しい説明を聞かず、支援に結びつけられなかった。
娘が松谷被告と同年齢という裁判員の女性(69)は「本人に全て責任があるというのはどうか。行政が全く関係ないとは言えないと思った」と語ったが、30代の男性は「行政の問題と事件が直接結びつくとは思わない」と話した。
一方、銚子市の越川信一市長は判決後、「明るくバレーボールが大好きだった松谷可純さんの命を救えなかったことは今も断腸の思い。事件を深く受け止め、二度と起こらないようにすることが市の責務だ」とのコメントを出した。【円谷美晶、信田真由美】