(私説・論説室から)憲法の絵本に教われば - 東京新聞(2015年6月3日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015060302000176.html
http://megalodon.jp/2015-0604-0940-07/www.tokyo-np.co.jp/article/column/ronsetu/CK2015060302000176.html

憲法の絵本「あなたこそ たからもの」が大月書店から刊行された。著者は弁護士の伊藤真さんだ。
憲法一三条は最も核心的な価値である「個人の尊重」を定めているが、絵本では次のように描かれる。
<いのちのおもさは、みんなおなじ。おかねもちも、びんぼうなひとも、ハンディキャップのあるひとも、(中略)ひとりひとりが、たいせつにされる>
面倒な掃除当番をある子どもにずっと押しつけた−。不当なことだ。このエピソードをてこにして話は続く。みんなが賛成したことだからといって、正しいとは限らない。権力が好き勝手に法律をつくって、国民の自由や権利が不当に害されてはならない。
<わたしたちが、えらんだだいひょうも、いつも、ただしいことをするとは、かぎらない。だから、ほんとうにたいせつなことを けんぽうに、かいておくことにしたんだ>
国家権力を制限し、多数決によっても奪えない国民の権利を保障する。そのために憲法に基づいた政治が必要で、それが立憲主義である。実にわかりやすい口調で説明される。
安保法制が国会で議論されている。憲法とは何か−、改憲に向けて進む今こそ、幅広い人々がその根本を知らねばならない。この絵本に教わることは多いはずだ。
(桐山桂一)

けんぽうのえほん あなたこそたからもの

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