伊方原発審査書案了承 再稼働の「お墨付き」ではない - 愛媛新聞(2015年5月21日)

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201505215548.html
http://megalodon.jp/2015-0521-2301-19/www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201505215548.html

原子力規制委員会四国電力伊方原発3号機について、新規制基準に適合すると認める「審査書案」を了承した。四電は年内の再稼働を目指すとしている。
しかし、新規制基準は、東京電力福島第1原発事故を受けて設けられた、原発の安全性を高めるための最低限のハードルの一つにすぎない。規制委の田中俊一委員長が「リスクはゼロではない」と繰り返し強調している通り、安全性の担保でも、再稼働の「お墨付き」でもないとくぎを刺しておきたい。
四電は規制委の指摘を受けて、想定される最大規模の揺れ(基準地震動)を申請時の570ガルから最大650ガルに引き上げ、耐震補強工事などの追加対策を進めてきた。
ただ、引き上げられた数値でも「不十分」とする専門家がいる。想定を上回る地震は過去に全国で何度も発生し、基準地震動も引き上げられてきた。650ガルは現時点での知見に基づく基準であり、委員会がそれ以上の規模の地震が絶対に起こらないと保証してくれたわけではない。
また、先に了承された関西電力高浜原発3、4号機(福井県)については、福井地裁が先月、再稼働を認めない仮処分決定を行い、関電が申し立てた仮処分の執行停止も今月18日に却下した。福井地裁は新規制基準自体「合理性を欠く」と指摘している。示された懸念は当然、伊方原発にも当てはまる。
地元同意という大きなハードルもある。地元の範囲をめぐっては、特に福島事故以降「広げるべきだ」との要望が周辺自治体から強くなっている。避難計画策定が義務付けられた30キロ圏でも不十分という意見も根強い。
九州電力川内原発1、2号機では、周辺自治体の不安をよそに、立地する薩摩川内市と鹿児島県だけの同意で「地元の同意」とした。同様に、八幡浜市大洲市など伊方原発の周辺自治体住民の意向が無視されるようなことがあってはならない。
県民の拒否反応も依然として大きい。愛媛新聞が2〜3月に行った世論調査では、69.3%の県民が再稼働に否定的で、福島事故以降8回の調査で最も高くなった。安全性への不安を訴える回答も89.5%に達した。
これまで、再稼働について「白紙」としてきた中村時広知事にとっても、無視できない数字だろう。事故への真摯(しんし)な反省がないままに規制委や電力会社が言う「安全」は、県民の「安心」にはつながっていない。県伊方原発環境安全管理委員会などでの議論を通じて、さらなる安全を追求するべきだ。拙速な判断は将来に禍根を残す。取り返しのつかない、あの悲劇を忘れてはならない。