伊方1号機廃炉 脱原発に転換する好機としたい - 愛媛新聞(2016年3月26日)

http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201603261393.html
http://megalodon.jp/2016-0326-0914-59/www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017201603261393.html

四国電力が、来年9月で運転開始から40年を迎える伊方原発1号機(伊方町)の廃炉を決めた。東京電力福島第1原発事故を受け、運転期間を原則40年に制限した原子炉等規制法に基づくものであり、当然の判断と言わねばなるまい。
完了まで30年ほどかかるとされる廃炉作業を安全に、確実に進めるよう求める。解体、撤去の際に大量に発生する放射性廃棄物の処分など、待ったなしの課題も多い。すでに廃炉を決めている他の原発にも共通する。政府は原発事業者や地元自治体などと緊密に連携し、解決への道筋を明示してもらいたい。
技術研究と人材育成を進め、蓄積、共有する仕組みも欠かせない。地元にとっては交付金や雇用の減少など財政や地域経済への懸念もあろうが、原発に依存しない社会の実現に向けた新たな産業創出など、地域の未来を考える好機と捉えたい。政府は支援に全力を挙げるべきだ。
原発の運転期間は、原子力規制委員会が認めれば最長20年の延長ができる「特例」がある。四電は、難燃性電源ケーブルへの交換など安全対策に多額の投資や長い工事期間が必要となるため、費用に見合う効果が得られないと判断した。1号機は発電出力が比較的小さいことに加え、廃炉を促すため政府が打ち出した優遇策も決断を後押ししたのは想像に難くない。
原発事業者は廃炉にかかる費用を、来月の電力小売り自由化後もこれまで通り電気料金に転嫁できる。さらに廃炉を決めた原発のタービンなど、収益を生まない設備を資産として減価償却できるよう会計ルールも改められた。廃炉を判断するに当たり、安全性よりも経済性に軸足を置いたと言わざるを得ない。
四電は7月下旬の伊方3号機再稼働を目指す。経済産業省幹部は「1号機の廃炉で再稼働に理解を得られるのではないか」と期待感を示した。廃炉で安全重視の姿勢をアピールし、再稼働への批判をかわしたい政府と四電の思惑がうかがえる。廃炉と再稼働は別の問題であり、県民の多くが再稼働に否定的な考えを持っていることを、肝に銘じる必要がある。
廃炉を決めた原発は全国で6基目になる。一方で、特例適用を申請する老朽原発もある。規制委は先月、関西電力高浜原発1、2号機(福井県)が新規制基準に適合しているとの見解をまとめた。「費用をかければ技術的問題は克服できる」(田中俊一委員長)との発言に、特例がなし崩し的に当たり前の措置になる危機感が増す。「40年ルール」形骸化は容認できない。
政府は2030年の電源構成比率目標で、原発を20〜22%とした。実はこの数字は、一定数の老朽原発の運転延長を織り込み済みで、さらに新増設に向けた議論が現実味を帯びることも危惧される。あらためて異を唱えるとともに、脱原発に向けて政策の転換を急ぐよう、重ねて求めておきたい。