17歳マララさん、ノーベル平和賞 銃撃屈せず女子教育権利訴え-東京新聞(2014年10月11日)

http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014101190071224.html
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◆紛争抑止へ子どもの権利擁護
今年のノーベル平和賞は、ウクライナ危機やイスラムスンニ派の過激派組織「イスラム国」との戦いといった国際情勢ではなく、子どもの権利にスポットを当てた。

国連教育科学文化機関(ユネスコ)によると、紛争や貧困や児童労働などを背景に、世界では五千七百万人(二〇一一年)の子どもが初等教育を受けられていない。

最も多いのがナイジェリアで一千万人余り、次いでマララさんの出身国パキスタンが五百万人以上、四番目がサトヤルティさんのインド。四分の三をアフリカのサハラ砂漠以南と南西アジアが占める。

これらの地域には、民主主義といった西洋的な価値基準を敵視し、女性の権利を過度に抑圧するイスラム過激派の温床となっている国が多い。

さらに教育を受けられないことが貧困や紛争と相まって、児童労働や少年兵、過激主義の伸長にもつながっている。

ノーベル賞の創設者アルフレド・ノーベルは、平和賞の対象を常備軍の廃止・縮小や平和の促進、国家間の友愛実現に貢献した人物にと遺言した。現在の平和賞は「平和」の概念を広くとらえており、子どもの権利擁護も紛争予防の重要な手段とみなしたことが、今回の授賞につながったと言える。

<マララ・ユスフザイさん> 97年7月12日、パキスタン北西部スワト地区生まれ。地元のイスラム過激派による女子教育抑圧をブログで告発し、12年、銃撃された。英国の病院で治療後に退院、同国で家族と暮らす。パキスタンの女子教育などを支援する「マララ基金」の創設を発表した。基金はナイジェリアの少女やシリア難民の教育支援にも充てられる。13年11月には欧州連合(EU)欧州議会のサハロフ賞を受賞した。

<カイラシュ・サトヤルティさん> 54年1月11日、インド・マディヤプラデシュ州ビディシャ生まれ。80年代以降、児童労働や搾取に苦しむインドの子どもたちの救出に取り組むほか、児童労働根絶に向けた世界的なネットワーク作りにも尽力。07年の米国務省の報告書で「現代の奴隷制を終わらせるために活動する英雄」と称賛された。