http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2013051702000103.html
英国のブレア元首相は、政権獲得前の党大会の演説で、こう言って喝采を浴びた。「政府の最優先課題を三つ挙げろと尋ねてほしい。教育、教育、教育だ」
その政権を財務相として支えたブラウン氏は首相ほど華も人気もなかったが、雄弁家のブレア氏をうならせる名言を吐いている。「子どもは人口の20%だが、未来の100%だ」
1980年代、サッチャー政権の構造改革で英国病を脱した英国はしかし、新たな病を得た。格差が広がり、貧困に苦しむ子どもが急増した。70年代半ばに5%だった児童の貧困率は、90年代半ばには14%にも達した。そこで登場したブレア政権の取り組みで、2005年には10%にまで抑えた。
では、日本の子どもの貧困率はいかほどか。経済協力開発機構(OECD)によれば、85年に11%だったのが、09年には15.7%にもなった。
であるのに、子育て支援などに費やされる公的な支出は、国内総生産(GDP)の1%。英国やフランスは3%台だ。児童の貧困率は先進三十五カ国中で九番目に高く、対策費のGDP比は下から七番。さて、政治の貧困度は何番目だろうか。
さすがに、「子どもの貧困対策法」制定を求める声が広がり、議員立法の動きも本格化してきた。あすは東京で市民集会も開かれる。いま子どもたちの貧困に目を向けねば、未来は大きく蝕(むしば)まれる。