『幸せの太鼓を響かせて〜INCLUSION(インクルージョン)〜』

制作総指揮:細川佳代子 監督:小栗謙一 
2011年作品 106分
配給:ableの会/ムヴィオラ 
2011年5月28日、角川シネマ新宿、梅田ガーデンシネマ他にて 全国順次ロードショー

   かつて、雲仙には立派な入所施設があった。

     ある日、理事長はみんなに聞いた。
      「今、一番したいことはなんだ?」

     みんなは言った。
      「うちに帰りたい」

   そこで、理事長は施設を解体することを決意した。

                              (公式HPより)


コンクリート福祉施設を取り壊し、戸建ての民間アパートなどで、生活を始める。施設から地域に出始めた当初、町では反対運動が起こったとのこと。現在は、地元の人たちとともに、ごく普通に地域社会で暮らしている。

映画は、プロとなった和太鼓奏者6人が、東京・草月ホールで新作「漸進打破(ぜんしんだは)」を演奏するまでの、半年間の活動と日常生活をドキュメンタリータッチで追い続ける。


彼らは、太鼓奏者として町のイベント行事や全国の少年院などで演奏を行なってきた。
時には、演奏前の練習にまとまりがなかったり、少ない観客の前で演奏することになったりと、さまざまな演奏活動が繰りひろげられる。

和太鼓リーダの岩本友広さん(34歳)は、7歳の時に知的障がいがあることで、コロニー雲仙の施設に預けられた。今は、給食センターで働く朋子さんと結婚し、4歳の一人息子・裕樹くんと3人で暮らしている。



(c)2011able映画製作委員会


ある日、裕樹くんを連れて実家に帰郷することになる。母親とは、これまでに2回しか面会していない。母親が映画に出演するにあたり、かなり躊躇されたらしい。その心情はいかばかりであったのであろう。残念ながら、母親からは語られていない。

松本少年刑務所での慰問公演では、和太鼓演奏に感動した受刑中の少年から「いままで、障がいのある人を見くだしていました」と手紙がよせられた。
その彼が、刑務所を出所後に、地域に受け入れられるための厳しい現実に直面するであろうことも映画の中でふれてもらいたかった。

しかし、この映画のラストは圧巻である。2001年にプロ集団となった彼らによる新作「漸進打破(ぜんしんだは)」の和太鼓演奏が、HDデジタルで収録された高音質音響のもとで充分に堪能させてくれる。


この和太鼓集団「瑞宝太鼓(ずいほうだいこ)」は1987年、知的障がい施設のクラブ活動として発足。
鬼太鼓座(おんでこざ)に所属していた太鼓パフォーマー時勝矢一路(じしょうやいちろ)さんの指導のもと、昨年(2010 年)の第9回東京国際和太鼓コンテストでは、第2位の実績をもつ。

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INCLUSION(インクルージョン)とは、「包み込み社会」のこと。
障がい者が普通の場所で普通に暮らす」ことを意味する。