いずも「空母化」与党了承 大綱案に事実上明記 専守防衛逸脱の恐れ - 東京新聞(2018年12月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121202000131.html
https://megalodon.jp/2018-1212-0957-17/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201812/CK2018121202000131.html

政府は十一日、新たな防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」と、今後五年間の装備品の見積もりを定めた中期防衛力整備計画(中期防)の骨子案を自民、公明両党のワーキングチーム(WT)会合で示し、大筋で了承された。短距離離陸と垂直着陸が可能な戦闘機「STOVL機」を搭載できるよう、海上自衛隊のヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」を改修する事実上の空母化が明記された。運用次第で他国への攻撃も可能で、専守防衛の逸脱につながる恐れがある。 (上野実輝彦)
政府は新大綱と中期防を十八日にも閣議決定する。
大綱骨子案で「必要な場合に現有の艦艇からのSTOVL機の運用を可能とするよう、必要な措置」をとると説明。中期防骨子案でSTOVL機が離着陸できるよう「多機能のヘリコプター搭載護衛艦(いずも型)の改修」を行うとした。政府は批判を避けるため、呼称を「空母」ではなく「多用途運用護衛艦」とする考え。
与党は、STOVL機の米最新鋭ステルス戦闘機F35B導入を了承済み。
政府は、憲法で認められる「自衛のための必要最小限度の範囲」を超えるとして「攻撃型空母」を保有してこなかった。政府はWT会合で、改修後もSTOVL機を常時搭載しないと説明。慎重姿勢だった公明党は「戦闘機を常時運用しないことが明示され、専守防衛を踏まえた改修だと確認した」(佐藤茂樹安全保障部会長)と理解を示した。
岩屋毅防衛相は十一日の記者会見で「他に母基地がある航空機を時々の任務に応じて搭載するのは、決して攻撃型空母に当たらない。(改修後も)他国に壊滅的な破壊をもたらす能力は持ち得ない」とした。
だがF35Bの離着陸が可能になれば、他国に打撃を与える能力を実質的に持つ。安全保障関連法で発進準備中の米軍機への後方支援を認めた。いずも艦上で給油した米軍機が他国の爆撃に向かう可能性もある。
元空将補で国際地政学研究所の林吉永事務局長は「いずもが改修されれば、戦闘機を搭載する頻度とは関係なく攻撃能力を備えた空母とみなされる。米戦闘機も艦載でき、有事の際に敵国の標的になる可能性も高まる」と指摘している。
中期防骨子案には、敵基地攻撃能力との関連が指摘される長距離巡航ミサイル「JSM」や「JASSM」などの導入推進も盛り込まれた。集団的自衛権を行使して米国に向かう弾道ミサイルを撃ち落とせる地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」など、従来の防衛政策を変質させる装備の導入も明記された。

「空母化」ありき 現場困惑 政府、違憲否定「F35B常時は搭載せず」 - 東京新聞(2018年12月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201812/CK2018121202000124.html
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政府・与党が策定中の新しい防衛大綱に、海上自衛隊護衛艦「いずも」の事実上の空母化を盛り込む方針が十一日、固まった。政府は戦闘機を常時搭載しないことを理由に、憲法上、保有できないとされる空母ではないと主張するが、専守防衛の根幹が揺るぎかねない。「運用のあり方があいまい」「財政危機につながる」。自衛隊関係者や専門家からは疑問や批判が出ている。 (原昌志、鷲野史彦、中沢誠)
「太平洋側には中国(の艦船や航空機)がしょっちゅう来ている。空母的な機能で、どこからでも航空戦力を展開できる意味は大きい」
防衛大綱などに、事実上の「いずも」の空母化が盛り込まれることを自衛隊の首脳の一人はこう評価しつつ、新たに購入する米国製の戦闘機「F35B」は常時搭載しないことを強調した。「あくまでF35Bも積めるというだけ。普段は他の航空機を運用する」
大綱の骨子案には、どのような時に搭載するかについて「必要な場合」と記した。
自民党国防族の一人は「もし太平洋側から攻撃されたら、基地から戦闘機を出動させても間に合わない。どこから攻撃されても対応できる防衛力を備えることが抑止力につながる」と説明する。
だが、「必要な場合」とはどんな事態を想定しているかについて、大綱の骨子案を了承した十一日の自民、公明の両党のワーキングチームの会合後も説明がないまま。今後、両党はいずもを「空母化」しないことを確認する文書を取り交わすものの、内容は一枚程度にとどまり、「必要な場合」をどこまで明示するのかは未知数だ。
海自内でも好意的な評価ばかりではない。ある幹部自衛官は「運用構想があって、何に使うかを考えるのが本来なのに、空母化ありきで進んでいる印象だ。現場は困る」と案じる。別の幹部も「戦術的に意味を持つような気がしない」と語る。
財政的な懸念もある。防衛省は事実上の空母化に向け、米国から二十〜四十機のF35Bを輸入することを検討している。今年、米政府がF35Bを購入した価格は一機百三十億円。四十機なら五千二百億円が必要で、さらに三十年間の維持整備費も数千億円に上るとみられる。このほか、空母化には甲板の耐熱強化や管制機能の追加などの改修が必要とされる。
パイロットの養成や訓練費用もかかるので、とてつもなく金がかかるだろう」。軍事評論家の前田哲男氏はこう指摘した上で、懸念を示す。「日本が、いくらいずもは多用途運用護衛艦だと言い張っても、中国をはじめアジア諸外国は空母としか見ないだろう。いずもの空母化が中国の軍拡をさらにエスカレートさせ、軍拡のシーソーゲームを招きかねない」

立法権の放棄に等しい 臨時国会閉会 - 東京新聞(2018年12月12日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121202000172.html
https://megalodon.jp/2018-1212-1001-49/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018121202000172.html

後味の悪さだけが残ったのではないか。十日閉会の臨時国会。国会は国権の最高機関、唯一の立法機関のはずなのに、政権の言うがまま提出法案を成立させる下請けと化している。猛省を促したい。
審議で法案の問題点が明確になったにもかかわらず、野党の反対を押し切り、審議を打ち切って成立を急ぐ。政権与党がこんなことを繰り返せば、何のための国会かと国民に叱責(しっせき)されて当然だろう。
日本の政治は、内閣(政府)が国会の信任によって存立する議院内閣制ではなく「官僚内閣制」だと指摘された。中央省庁の官僚が許認可権などを「武器」に政治を長く牛耳ってきたからだ。
この「官僚主導」政治を国民の代表たる「政治家主導」に変えるのが平成の一連の政治改革だが、臨時国会では時を三十年以上も戻すようなことが行われた。改正入管難民法の審議である。
与党が成立を強行したこの法律は、外国人労働者をどの程度、どの産業分野に受け入れるのか、どの程度の技能水準を求めるのか、など制度の根幹を法務省令などで定めるとしている。こうした記述は法律中、三十カ所を超える。
安倍晋三首相らは、詳細を尋ねられても「検討中」と繰り返し、明らかにしようとしなかった。
制度の根幹部分を国会の議決を必要としない省令に委ねるのは行政府への白紙委任、官僚主導政治への逆戻りにほかならない。極言すれば、立法権の放棄に等しい。
与党が、野党の反対を押し切って政府提出法案の成立を強行するのはもちろん許されないが、特に問題にしたいのは、与党が事前審査の段階で自らの立法権を奪う省令委任を問題視せず、国会提出をなぜ認めたのかという点だ。
政権中枢への過度の権力集中で抵抗できなかったのかもしれないが、自らの存在意義を損なう立法権侵害に思いが至らず、見過ごしたのなら政治の劣化は深刻だ。
外国人をどう受け入れ、多文化共生型社会をどうやって築くのかは、国の在り方に関わる重要な問題だ。こうした課題こそ、各政党の党首同士が議論を深めるべきなのだが、臨時国会党首討論は一度も行われなかった。
国会は自らの役割をいま一度、自問し、「安倍一強」政治の下で弱体化した立法や権力監視の機能強化に努めるべきではないか。
国会が議論すべきことを議論せず、政権中枢の言いなりになって追認機関と化す過程は、かつて歩んだ戦争への道と重なる。

(大弦小弦)白板に描かれた1本の木。「病気だけを診るのではなく、患者の背景を診てあげてください… - 沖縄タイムス(2018年12月12日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/358096
https://megalodon.jp/2018-1212-1003-38/https://www.okinawatimes.co.jp:443/articles/-/358096

白板に描かれた1本の木。「病気だけを診るのではなく、患者の背景を診てあげてください」。ベテラン医師はこう話しながら、生活や仕事、家族など患者を取り巻く関係性を表す枝を書き足した

▼以前取材した研修医らが学ぶ講座の一こま。病気の背景を知ることで治療や予防にもつなげられ、そのための患者との対話の重要性を説いた。医師にコミュニケーション能力は欠かせないと思った

▼医学部不正入試問題で、順天堂大学が女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱っていたことが明らかになった。面接などの2次試験で「女子はコミュニケーション能力が高いため、補正する必要がある」と一律に減点していた

▼怒りを通り越してあきれるが、この差別的な扱いは10年前から行われていたという。調査した第三者委員会からも合理性がないと指摘され、人権を踏みにじる言い訳にも批判が相次いでいる

▼本来、個人の資質や特性を重視するべきで、それを見極めるのが面接者の仕事でもある。性別というバイアスで能力を区切る発想自体、許されない

▼大学側は「当時は私学の裁量の範囲内だと考えていた」と釈明した。身勝手なルールによって、医師になる夢と努力を奪われた受験生も少なくないはずだ。教育の機会を提供し、人材を育てる大学の使命は感じられない。 (赤嶺由紀子)