伊方原発容認 安全神話の復活なのか - 東京新聞(2018年11月17日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111702000137.html
http://archive.today/2018.11.17-042318/http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018111702000137.html

噴火も地震も取るに足らない、避難計画は不完全でもいいと言うのだろうか。四国電力伊方原発の運転差し止めを求める住民の訴えを司法はまたもや退けた。「安全神話」の亡霊を見る思いである。
原子力規制委員会の審査には合理性があり、四国電力が策定した最大の地震の揺れや噴火の影響についての評価も妥当」−。
高松高裁は、四国電力が示したデータに基づいて、規制委がくだした新規制基準への「適合」判断を丸ごと受け入れたかのように、住民側の訴えを退けた。
破局的噴火は予知できない、地震の揺れの評価方法に問題がある−という専門家の指摘も顧みず、九月の広島高裁、大分地裁、そして今回と、繰り返される判断だ。
一方で高松高裁は、原発周辺の自治体が策定を義務づけられた避難計画に関しては、陸路も海路も輸送手段に懸念があって、屋内退避施設も不足しており、「不十分だ」と認めている。
再三指摘してきたように、日本一細長い佐田岬半島の付け根に位置する伊方原発は、周辺住民にとって、“日本一避難しにくい原発”との声もある。
実際に事故が起きたとき、原発の西側で暮らす約四千七百人の住民は、船で九州・大分側へ逃れる以外にないのである。
海が荒れれば船は出せない。地震港湾施設が被害を受けたらどうなるか。避難者を港へ運ぶバスなども、確保できる保証はない。その上、屋内退避場所さえ、足りていないというのである。
現状では、多くの住民が避難も屋内退避もできず、放射線の危険にさらされる恐れが強い。そのような認識がありながら、司法はまたも住民の訴えを退けた。避難計画の軽視が過ぎる。
規制委が基準に「適合」すると認めた以上、福島のような過酷事故は起こり得ない、との大前提に立つからだろう。
これでは、安全神話の復活と言うしかないではないか。
規制委は、原発のシステムが規制基準に「適合」すると認めただけで、安全の保証はしていない。規制委自身も認めていることだ。避難計画の評価もしない。それなのに規制委の審査結果を司法は追認するだけだ。こんなことでいいのだろうか。
責任は棚上げにしたままで、原発の稼働が次々許される。

(政界地獄耳)庶民生活みる内閣参与は「10%」反対 - 日刊スポーツ(2018年11月17日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811170000255.html
http://archive.today/2018.11.17-005148/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201811170000255.html

★国会は、とぼけた答弁を繰り返す大臣に占領されてしまっているようだが、来年の消費税議論も重要な議題だ。税率のアップや軽減税率品目など、計画では景気の減退のみならず、複雑な仕組みが問題視されている。今週末のしんぶん赤旗日曜版には「高すぎる 内閣参与も反対 消費税10% 不況いっそう 貧困化が加速」という見出しで、10%の税率アップに反対している京都大学大学院教授で内閣官房参与藤井聡のインタビューが一面を飾っている。

★その中で藤井は「来年10月の消費税増税は凍結すべき。10%への引き上げは日本経済を破壊する。日本経済には、14年の消費税増税インパクトが濃密に残っている。消費税を8%に上げた結果、家計の実質消費支出は14年から減り続け、17年までの4年間で7%も減少した。増税によって国民生活は7%も貧困化した」といい「今の日本はまだ、デフレ不況から脱却していない。にもかかわらず、消費に対する罰金として機能する消費税を増税すれば、消費は低迷し、国民の貧困化がさらに加速するのは間違いない」とした。

★「こうした状況で消費税を増税するのは、栄養失調で苦しむ子どもにさらに絶食を強いるもの。ポイント還元策のようなものを続けても、『15兆円の補正予算を5年連続で支出する』ぐらいの規模感が必要」。そして「今なすべきは所得税累進課税を強化し、法人税率を引き上げること。企業は多くの内部留保を抱えている。法人税率を上げることで、内部留保実体経済に還流され、大きな経済効果が期待できる」とした。

★末尾では「消費税増税中止はありうるが、それは国民世論」だとし「党派は関係ない」と結んでいる。強烈な政府批判というより、実体経済と庶民の生活を説明している。内閣官房参与の発言としては衝撃だが、アベノミクスは成功していないことを読者は感じる。藤井を抱える内閣は懐深い。(K)※敬称略

子どもの権利条約、母子手帳に 世田谷の小学生の願いがきっかけ - 東京新聞(2018年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000283.html
http://web.archive.org/web/20181116120306/http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111602000283.html

十一月二十日の「世界子どもの日」は、国連で「子どもの権利条約」が採択された日にあたる。この条約を、東京都世田谷区は来年度から母子健康手帳母子手帳)に掲載することを決めた。「条約の思いが広まって、暴力やいじめなどで悲しい思いをする子が減ってほしい」と願う一人の小学生の呼び掛けがきっかけだった。 (奥野斐)
母子手帳への掲載を訴えたのは、同区在住で白百合学園小六年の坂口くり果さん(12)。子どもの貧困や搾取問題に取り組む認定NPO法人「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」のキャンプなどに参加し、差別や虐待から子どもの基本的人権を守る国際条約の存在を知った。
条約は、各国政府や団体が訳して普及しているが、「フリー・ザ・チルドレン・ジャパン」版は子どもが主語。坂口さんが特に好きなのは、第六条「きみには、生きる権利がある」、第八条「きみは、世界で特別な一人」、第一二条「きみには自分の意見や気持ちを周りに伝える権利がある」という。
同時に、貧困や暴力で苦しむ子どもがいるのは海外だけではないことにも気付いた。「この条約を多くの人に知ってほしい」と考えた坂口さん。昨秋、予防接種を受けたときに母子手帳を見て「全ての親が持つ母子手帳に載せられたら」と思い付いた。
坂口さんと母親が区に問い合わせると、以前は掲載していたこともわかった。母子手帳は最低限の掲載内容を厚生労働省が規定しているが、自治体が独自で加えることもできる。世田谷区は、二〇一〇年度版まで子どもの権利条約を掲載していたが、ページ数を減らすレイアウト変更で削っていた。
坂口さんは、活動するNPOや同区の風間穣(ゆたか)区議を通じ、今年八月に保坂展人区長に面会。九月の区議会定例会で取り上げられ、保坂区長は「来年度版から必ず条約の記載をするよう指示をした」と答弁した。同区は毎年八千〜九千冊を配布。条文すべては困難とみられるが、来年度版から条約の骨子を掲載する予定という。
坂口さんは「子どもにも大人と同じ権利があるんだなと分かった。子どもも条約を知って『守られているんだな』と実感したら、いじめをすることも減ると思う。みんなに広げていきたい」と話した。

子どもの権利条約> 1989年11月20日に国連で採択され90年に発効。日本は94年に批准した。前文と本文54条からなり、子どもの生存、発達、保護、参加などの包括的な権利を実現・確保するために必要な事項を具体的に定めている。

<税を追う>歯止めなき防衛費(4)レーダー商戦 しのぎ削る米メーカー - 東京新聞(2018年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111702000129.html
https://megalodon.jp/2018-1117-0910-43/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201811/CK2018111702000129.html

九月二十八日、東京都内のホテル。サイバーテロミサイル防衛(MD)のセミナーが開かれ、国内外の防衛企業の幹部や自衛隊OBら約三十人が出席した。主催したのは旧防衛庁長官や初代防衛相を歴任した久間章生(きゅうまふみお)氏が会長を務める一般社団法人・国際平和戦略研究所。久間氏は二〇〇九年の衆院選で落選後、政界を引退したが、日米の防衛分野に広い人脈を持つ。
「これからの戦争はミサイルの時代になってきた」
久間氏のあいさつの後、海上自衛隊OBの坂上芳洋氏が講演した。環太平洋合同演習の際、指揮官としてイージス艦を運用した経験があり、退官後は米軍事メーカー・レイセオンのシニアアドバイザーも務めた。講演のテーマは政府が導入を決めた地上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。坂上氏はシステムに搭載されるレーダーに米ロッキード・マーチン製の「SSR」が選ばれたことに疑問を呈した。
SSRは一基百七十五億円ほどとされるが、坂上氏は「まだ構想段階で、ミサイル射撃試験などをしていない。日本が試験費の負担を強いられ、価格がさらに膨らむ可能性がある」。
会場からは「それは国会が止まるくらいの話だな」という発言も出た。斉藤斗志二(としつぐ)元防衛庁長官だった。
北朝鮮は一六年以降、核や弾道ミサイルの実験を繰り返した。防衛省の幹部は「誰もがミサイル防衛強化が必要と考えていた。官邸は高高度(こうこうど)防衛ミサイル(THAAD)も地上イージスも米国製なので、どちらでも構わないという立場だった」と明かす。
地上イージスに決まったことで、防衛省は米ミサイル防衛庁からSSRと米レイセオン製のレーダー「SPY−6」の提案書を受け取り、レーダーの選定に入った。
イージス艦ロッキード社製の「SPY−1」を搭載している米海軍が今後、レイセオン製のSPY−6に更新するため、日本の防衛業界でも「レイセオンが有利」とささやかれた。だが今年七月、ロッキード社に軍配が上がり、業界に驚きが広がった。
ロッキード社と関係が深いコンサルタントで、元航空自衛隊空将の山崎剛美(たかよし)氏は「日本製の窒化ガリウム半導体を組み入れるなどして大きさを変えないで性能を向上させた」と勝因を分析する。お膝元の米国で失った商機を日本で取り返した格好だ。
「今回のレーダー選定は単にイージス・アショアのレーダーを決めるというだけではない」。そう指摘するのは元米陸軍大佐で、レイセオンに勤めたことがあるスティーブン・タウン氏。次のレーダー商戦は海上自衛隊イージス艦だ。
海自は保有する六隻のイージス艦ミサイル防衛能力を向上させながら、二〇年度までに八隻に増やす計画だ。レーダーはロッキードのSPY−1が搭載される予定だが、「近い将来、レーダーの更新が始まっていくだろう」と海自OB。レーダー更新は一基百億円を超す一大ビジネスだ。
今や米国製を中心に高額兵器を次々と導入するようになった日本。世界の軍事メーカーや商社が虎視眈々(たんたん)と商機をうかがう。

就労外国人 ずさんなデータ 付け焼き刃ぶりが表れた - 毎日新聞(2018年11月17日)

https://mainichi.jp/articles/20181117/ddm/005/070/025000c
http://archive.today/2018.11.17-001302/https://mainichi.jp/articles/20181117/ddm/005/070/025000c

外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案をめぐり、法務省衆院法務委員会に提出した資料のデータに誤りが見つかった。
入国管理局が昨年、失踪後に所在を確認した技能実習生2870人に行った聞き取り調査で、失踪動機として「より高い賃金を求めて」と回答した割合が約87%から約67%に訂正された。ほかの回答を誤って算入していた「計上ミス」と法務省は説明するが、あまりにもずさんだ。
技能実習生は職種や実習先を自由に変えられない制度となっており、実習先を離れれば在留資格を失う。今年7月1日現在の不法残留者数は7814人に上るという。
そもそも実習生の失踪は制度のゆがみだと認識すべきだ。途上国への技術移転を建前としているにもかかわらず、実習生への支援を受け入れ企業などに委ねた結果、低賃金や長時間労働などを嫌って失踪する実習生が年々増えている。
就労を目的とした在留資格を新設するなら、その前に労働・生活環境の整備を図るのが筋だろう。
しかし、政府の法案は技能実習制度をそのまま残し、実習を終えた外国人が新資格を取得する流れを想定している。一定の日本語能力や技能の習得を新資格の前提とする以上、その方がコストをかけずに人材を確保できるとの発想だろうが、ゆがみを放置することは許されない。
今回、誤りが見つかったのは、そうした議論の前提となるデータだ。政府・与党はきのうの法務委で野党の反対を押し切って法案審議に入る構えだったが、見送られた。入国管理政策の転換につながる重要法案であることを踏まえれば、データを精査して仕切り直すのは当然だ。
先の通常国会では働き方改革関連法をめぐって労働時間の調査結果に不適切なデータが見つかり、裁量労働制の対象を拡大する規定の削除に政府が追い込まれた経緯がある。
先に法案ありきでデータを軽視する傾向が政府内にありはしないか。外国人労働者の受け入れ見込み人数の取りまとめも法案の国会提出後だった。そうやって付け焼き刃でデータを整えるから、そのツケが不自然なミスにつながる。
実習生の声が詰まった調査データをしっかり審議に生かしてほしい。