就労外国人 ずさんなデータ 付け焼き刃ぶりが表れた - 毎日新聞(2018年11月17日)

https://mainichi.jp/articles/20181117/ddm/005/070/025000c
http://archive.today/2018.11.17-001302/https://mainichi.jp/articles/20181117/ddm/005/070/025000c

外国人労働者の受け入れを拡大する入管法改正案をめぐり、法務省衆院法務委員会に提出した資料のデータに誤りが見つかった。
入国管理局が昨年、失踪後に所在を確認した技能実習生2870人に行った聞き取り調査で、失踪動機として「より高い賃金を求めて」と回答した割合が約87%から約67%に訂正された。ほかの回答を誤って算入していた「計上ミス」と法務省は説明するが、あまりにもずさんだ。
技能実習生は職種や実習先を自由に変えられない制度となっており、実習先を離れれば在留資格を失う。今年7月1日現在の不法残留者数は7814人に上るという。
そもそも実習生の失踪は制度のゆがみだと認識すべきだ。途上国への技術移転を建前としているにもかかわらず、実習生への支援を受け入れ企業などに委ねた結果、低賃金や長時間労働などを嫌って失踪する実習生が年々増えている。
就労を目的とした在留資格を新設するなら、その前に労働・生活環境の整備を図るのが筋だろう。
しかし、政府の法案は技能実習制度をそのまま残し、実習を終えた外国人が新資格を取得する流れを想定している。一定の日本語能力や技能の習得を新資格の前提とする以上、その方がコストをかけずに人材を確保できるとの発想だろうが、ゆがみを放置することは許されない。
今回、誤りが見つかったのは、そうした議論の前提となるデータだ。政府・与党はきのうの法務委で野党の反対を押し切って法案審議に入る構えだったが、見送られた。入国管理政策の転換につながる重要法案であることを踏まえれば、データを精査して仕切り直すのは当然だ。
先の通常国会では働き方改革関連法をめぐって労働時間の調査結果に不適切なデータが見つかり、裁量労働制の対象を拡大する規定の削除に政府が追い込まれた経緯がある。
先に法案ありきでデータを軽視する傾向が政府内にありはしないか。外国人労働者の受け入れ見込み人数の取りまとめも法案の国会提出後だった。そうやって付け焼き刃でデータを整えるから、そのツケが不自然なミスにつながる。
実習生の声が詰まった調査データをしっかり審議に生かしてほしい。