(政界地獄耳)国民に信用されない災害対策 - 日刊スポーツ(2018年7月13日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807130000195.html
http://archive.today/2018.07.13-011224/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807130000195.html

★本来政権にとって災害は国民世論が1つになり、与野党対立も休戦。外遊も取りやめ全力で取り組むことで、政権は強い基盤で復興策を推進という構図になるものだが、今回はそうは進んでいないようだ。11日、「平成30年7月豪雨」で甚大な被害を受けた岡山県を訪問した首相・安倍晋三は政府の初動対応について「政府として一丸となって発災以来、全力で取り組んでまいりました。現場の声を吸い上げ、国が自治体と一体となって対応していく考えです」と説明した。
★だがそれをうのみにできないのは、宴席を囲んでいたことをネットで披歴するセンスと最後まで外遊を諦められず、災害拡大の実態とは裏腹に非常事態対策本部設置にとどめ、模索し続けたことだろう。岡山では避難所に突然エアコンが設置されたことや、「急に避難所に自衛隊が来てお風呂が設置された。ここは比較的被害が少ない地域なのになぜ優先的に? 警備体制がやたらすごくて、今日から学校も再開なのに何があるのかと思ったら安倍総理が来るんだって」などとツイートされると、経産相世耕弘成が「安倍総理視察とエアコン設置は全く無関係。設置の指揮を執ってきた者として明確に申し上げます」と反論した。
★今回の視察では避難所でのメディアの撮影が不可という厳戒態勢が敷かれた。結局ひとつひとつの対応も、基本的な信頼関係が国民との間にないと、本当にそうであっても疑われたり信用されない。今まで、おかしいことがあっても「全く問題ない」と政府も党も国民の疑問を突っぱねてきた結果が、リーダーシップが必要な時に発揮されないことになる。仮設住宅の早期建設、インフラ復旧など手を打つべきことは多いはずだ。(K)※敬称略

(政界地獄耳)出席した西村官房副長官は責任転嫁 - 日刊スポーツ(2018年7月12日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807120000265.html
http://archive.today/2018.07.12-065627/https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/201807120000265.html

★「私は野党としても災害対策等に全面的に協力することを官邸に申し入れたいと思い総理に電話をし『大変な事態だから国会対応等全面的に協力するので、心おきなく災害対策に当たってほしい』ということを総理に申し上げました。総理の方からは、この際各党の代表と話をしたく、18時に官邸においでいただきたいということでありました。幹事長とともに直ちにうかがうことにいたします」。これは誰の言葉だろうか。11年3月11日。東日本大震災当日の当時の自民党総裁谷垣禎一ツイッターだ。総理とは民主党政権の首相・菅直人だ。
★ところが与党は国会でのカジノ法案審議を優先した。避難指示で緊迫する現場を横目に「赤坂自民亭」で宴席を楽しんでいた自民党幹部や首相、閣僚はただ飲んでいたのか。同席していた防衛相・小野寺五典のように「防衛省から随時連絡が来ており、その都度指示を出していたので特に支障はないと思っている」というのならば、浮かれた写真をネットにあげていた同席者が問題なのか。幾度も開催されているこの宴席に、この日初めて首相が顔を出したという。つまり総裁選の選挙運動のようなもので、政調会長岸田文雄も同じようなたぐいの理屈だったのかも知れない。
★写真をネットにあげていた議員は複数いるが、看過出来ないのはツイッターにアップしていた官房副長官西村康稔内閣府副大臣の時、広島土砂災害現地対策本部長を務め「命を守る防災・危機管理 その瞬間、生死を分けるもの」(プレジデント社)なる本まで出版した。宴席などの対応を9日夜のテレビで問われ「落ち着いたところで、それぞれの自治体がどのように対応したのか、政府の呼びかけにどういう風に反応したのか、を検証していくことが大事」と責任転嫁ともとれる発言をした。ちゃんとした自民党はもうないのだろうか。谷垣復帰はないのか。(K)※敬称略

原爆投下前後の様子描く 相模原で31日 映画「ひろしま」上映 - 東京新聞(2018年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201807/CK2018071302000143.html
https://megalodon.jp/2018-0713-0909-19/www.tokyo-np.co.jp/article/kanagawa/list/201807/CK2018071302000143.html

ひろしま」の一場面

原爆が落とされる前後の広島を描いた映画「ひろしま」(百四分)が三十一日、相模原市南区グリーンホール相模大野多目的ホールで上映される。原水爆禁止日本国民会議原水禁)相模原地区会議のメンバーなどでつくる実行委員会が、八月の原爆の日を前に企画した。製作された時代の空気を感じてもらおうと、16ミリフィルムで映写する。
一九五三年に日教組が組合員のカンパなどで製作した。沸騰したような高温の川に子どもが飛び込む描写など、事実に迫る内容として評価される一方、政治的な圧力から上映活動が限られ、「幻の映画」ともいわれた。
メンバーの金子豊貴男市議が五月、市内の相模原教育会館の倉庫で16ミリフィルムの作品を発見。市販されているDVDではなく、当時の雰囲気がより伝わるとして映写機を借り、16ミリで上映することにした。金子さんは「地獄絵図のような戦争の悲惨さを伝えていく大切さを再認識できる作品。作られた時代も感じながら見てほしい」と話す。
原爆投下を描いた短編アニメ「ピカドン」とセットで上映し、午後三時と同六時半の二回。定員は各二百四十人。当日千円、前売り八百円、高校生五百円、中学生以下無料。問い合わせは原水禁相模原地区=電042(741)0232=へ。(井上靖史)

自主性育てつつ安全確保 かわいい子には…子どもの旅 - 東京新聞(2018年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201807/CK2018071302000194.html
https://megalodon.jp/2018-0713-0910-09/www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201807/CK2018071302000194.html


もうすぐ夏休み。「かわいい子には旅をさせよ」といわれるように、中学や高校時代の旅は成長のきっかけになることも。だが一人旅や子どもだけの旅は、親には少し心配だ。どうすれば、自主性を育みつつ安全な旅ができるのか。経験者らの話から探った。 (竹上順子)
どこで何をしているか分かれば、まめに連絡しなくても大丈夫−。東京都文京区の主婦、小橋美枝子さん(45)は三年前、中学二年だった長男、一慧(いっけい)さん(16)の「行程表」=イラスト参照=を見て思った。友達と二人、大阪の祖母宅へ泊まりにいった時のことだ。
テーマパークを訪れる二泊三日の旅。電車とパソコンの好きな一慧さんは自分で旅程を組み、行程表も作った。子ども用の携帯電話を持っていたが、美枝子さんから連絡することはほぼなかった。トラブルもなく、祖母とお好み焼きを食べるなど「ばあば孝行」もして帰ってきた。
「表情から充実した時間だったこと、友人との絆が深まったことが分かりました」と美枝子さん。小学六年の時には、移動時間を甘く見て、自転車で約三十キロ離れた貯水池へ行き、夜になっても帰ってこられなくなった経験もあるが「失敗も人生の糧になる。引き出しにたくさんのものを詰め、行動に責任を持てる社会人になってほしい」。

  ◇ 

宿泊先として安心できる場所の一つがユースホステル(YH)だ。日本ユースホステル協会(東京)広報の池田和誠(かずまさ)さん(36)は「スタッフとの距離が近く、交流スペースや『お茶会』など宿泊者が仲良くなれる場もある。一人旅や友達同士の旅はもちろん、自転車で日本一周しているような子も来ますよ」と言う。
会員になれば、国内なら素泊まりで三千円台という宿泊料も魅力。外国人旅行者も多く、池田さんは「さまざまな国や世代、性別の人との出会いによって、人種や宗教などへの偏見を持たない大人になっていくのでは」と話す。
自身は中学一年の頃、父親とインドでキャンプをして旅に魅了された。英語を勉強し、高校三年の夏には一週間、北極圏を一人旅。「短くても自分で計画して『できた』と思える旅は、大きな経験になる」と力を込めた。
YHは子どもでも予約できるが、通常のホテルやパッケージツアーは、未成年の予約は保護者の同意書を求められるのが一般的。海外旅行では、親権者が同行しない未成年の入国に条件を付けている国もある。

◆危険は必ずある
最近は会員制交流サイト(SNS)で知り合った同じ趣味の友人などに、会いに行きたがる子もいる。しかし子どもとネットの問題に詳しい兵庫県立大の竹内和雄准教授(生徒指導論)は「危険は必ずある」と強く注意する。
竹内さんによると、多くの子はビデオ通話などで相手と話し、大人の「なりすまし」ではないと確認しているという。だが、その向こうに実際に誰がいるかは分からない。コンサート会場やスポーツの競技場など、人の多い場所で会うという子もいるが、完全に安全が保たれるわけではない。
「何歳なら大丈夫という基準はない。子どもの普段の様子を知る親が、きちんと見極めて」と竹内さん。殺人などSNSを介した重大事件にも触れ、親子でよく話し合うことを勧める。

多彩な保育人材育成へ 主婦、社会人、元保育士など 専門学校、短大が尽力 - 東京新聞(2018年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201807/CK2018071302000193.html
https://megalodon.jp/2018-0713-0911-47/www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/201807/CK2018071302000193.html

全国的に保育士不足が課題となる中、幅広い年齢層の人が保育士資格を取るのを支援したり、結婚などを機に退職していた元保育士の再就職を促したりする動きが出てきている。愛知県内では、専門学校や短大が、授業の時間やカリキュラムを工夫し、多彩な保育人材の育成に努めている。 (花井康子)
「未就園児が中に入って遊べる、大きなトンネルをつくってみましょう」。保育士の資格取得を目指す十〜三十代の男女九人が、相談しながら手を動かす。「もっと真っすぐ」「きれいな配色にしよう」。カラフルなテープやビニールのシートを手に、和気あいあいとした雰囲気。保育士を養成する専門学校「こども芸術学院」(名古屋市中村区)の授業の一こまだ。
同学院は、デザインやイラストの専門学校を運営する学校法人敬道学園が今春開設したばかり。「高校新卒者だけでなく社会人や子育て経験のある人など、誰でも保育士を目指せるように」が理念。芸術活動を通じて、子どもの感性や創造力を伸ばす人材を育成する。受講生には 「子どもの視点で楽しむこと」を大切にするよう呼び掛けている。
受講生には、社会人や一人親家庭の母親もいる。子育てなどと両立しやすいように、授業は平日の午前中のみ。カリキュラムは三年間。保育士や幼稚園教諭を育成する豊岡短大(兵庫県豊岡市)こども学科の通信教育課程との併修で、卒業と同時に保育士資格と幼児教育学の短期大学士の資格を取得できる。
経済的にも支援する。返済不要の特別奨学金制度を本年度に限って導入。受講生九人中七人が利用している。四歳と一歳の二児を育てる愛知県春日井市の主婦寺嶋香織さん(33)は「子育てしながらでも通えるので無理がない。資格が取れたら子どもに関わる仕事がしたい」と笑顔を見せた。
理事長の牧野健介さん(46)は「保育士の確保は急務だが、誰でもできる仕事ではない。新卒だけでなく社会人などの経験を生かし、子どもときちんと向き合える人材を育て、保育の質の向上につなげたい」と話した。

◆再就職支援セミナーも
保育人材の掘り起こしを目指す教育機関は他にもある。愛知文教女子短大(同県稲沢市)内の足立学園総合研究所は、保育士資格はあるものの、実際に保育の仕事に就いたことがない人や、ブランクがある人らの再就職を後押しする「潜在保育士再就職セミナー」を二年前から開いている。受講は無料で、今年は三十〜七十代の十三人が参加した。
全五回の講座では、子育て事情の変化や安全管理、保護者対応などを同短大教員らが講義。同市内の保育園や児童センター、短大内の子育て交流ルームなどで実習や演習も実施する。修了すると、近隣保育施設への就職を支援。二〇一七年十月現在で、修了した二十五人のうち十四人が保育園などに勤務している。
同県清須市の江口美智子さん(58)は、自身の子育てなどを理由に七年前に働いていた保育園を離職。子育てが落ち着き「もう一度子どもに関わる仕事をしたい」 とセミナーを受講した。 江口さんは「保育事情が変わっていることに驚いた。例えば、危険性が指摘されているうつぶせ寝は、以前はどちらかと言えば推奨されていた。変化に対応できるようにならないといけないと実感した」と話した。
セミナーを担当する同短大幼児教育学科准教授の真下あさみさん(56)は「保育へのニーズは多様化し、施設の形態もさまざま。セミナーで学び直し、再就職のきっかけになれば」と力を込めた。

<北欧に見る「働く」とは> (読者から) 勤労を支える社会に - 東京新聞(2018年7月13日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071302000158.html
https://megalodon.jp/2018-0713-0912-52/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2018071302000158.html

六回の連載に貴重なご意見をお寄せくださいました。心より感謝します。
ご意見に共通する思いは、意欲を持って働き続けることが難しくなっているとの危機感です。日本の将来への不安です。
スウェーデンの労働政策に詳しい愛知県東郷町の猿田正機・中京大名誉教授(74)は「『日本的経営』も日本の労働・社会政策(社会保障・福祉)も非常な困難に直面して目標がみえなくなっている」と指摘します。
ファクスでも寄せられました。「これから加速度的に人口が減少、特に若者や就労者が著しく減っていく中にあって一刻の猶予はありません。就労者、若者が安心して暮らせる社会を実現することは少子高齢化に対しても一定の歯止めとなります」とつづっています。
町工場が多い東京都大田区からのはがきは、こうです。個人事業者と思われる方です。「保護の網」から漏れている現状を実感し「セーフティーネットは絶対必要だとつくづく感じています」と危機感を訴えています。
この思いを読者の方々と共有できたことを大切にしたい。
解決策を考える上で猿田さんは「北欧の働き方や経営、さらには労働・社会政策は日本に多くのヒントを提供してくれていると私は確信しています」。
そのヒントを指摘するのは千葉県柏市司法書士佐々木利夫さん(75)です。
「救貧の社会保障から、人権としての社会保障とか、生きて国家を支えていることの配当としての社会保障とか、社会保障発想の転換が必要ではないか」
日本の社会保障は、貧困から救う救貧や貧困に陥らない防貧の発想です。安心して働き続けられることは人が生きる基本です。それを支えられる社会に。そんな思いが伝わります。同感です。
北欧の取り組みはしばしば「小国だからできる」と言われたりします。そうでしょうか。名古屋市南区の服部朝子さん(69)から力強い思いが寄せられました。
「北欧の人たちも人間、私たちも人間、彼らにできて私たちにできないはずがないだろうとの自信を持ってほしい」
そして「この時、ジャーナリズムの果たす役割は大きい!」。叱咤(しった)激励です。
どうすれば社会は変わるのか。ともに考え続けましょう。私たちは書き続けます。 (鈴木 穣)

(余録)日本書紀の応神天皇の時代に多くの渡来人の記事がある… - 毎日新聞(2018年7月13日)

https://mainichi.jp/articles/20180713/ddm/001/070/153000c
http://archive.today/2018.07.13-001412/https://mainichi.jp/articles/20180713/ddm/001/070/153000c

日本書紀の応神(おうじん)天皇の時代に多くの渡来人の記事がある。秦(はた)氏や倭漢(やまとのあや)氏などの祖先たちが「百二十県の人民」や「十七県のともがら」を率いてやってきたとある。これが事実だとすれば、すごい大量移住である。
応神紀の記事は、その後の何波かにわたる渡来人の来朝を象徴する記述と見られている。6世紀半ばの欽明(きんめい)天皇元年の渡来人の戸籍調査では秦人(はたひと)だけで7053戸を数えている。当時の人口を思えば渡来人の存在感は大きかったろう。
こちらは今日の人口動態調査だ。今年初めの日本人の人口は前年から37万人減って、1億2520万人、人口減は9年連続、減少幅は調査開始以来最大となる。これに対し国内在住の外国人は249万人で、4年連続最多を更新した。
こと15〜64歳の生産年齢人口は、初めて全人口の6割を切った。一方で国内に住む外国人は若い世代が多く、20代について見れば同年代の日本の人口の6%近くを外国人が占め、東京では20代の10人に1人が外国人という計算になる。
街のあちこちで働く外国人が目立って当然である。先ごろ政府が外国人の単純労働者の制限つき受け入れ方針を示したのも、深刻化する人手不足のゆえだった。だがそこには共に社会を支える外国人の暮らしを守る策や構想は乏しい。
古代の渡来人がもたらした文化はその後の日本を作った。ならば今、人口減少社会の日本人は外国の多様な働き手をどう迎え入れ、共に安心できる暮らしを営むのか。なすべき論議が現実に追い越された。

参院定数6増案 身を切る改革に逆行する - 琉球新報(2018年7月13日)

https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-760823.html
http://archive.today/2018.07.13-000829/https://ryukyushimpo.jp/editorial/entry-760823.html

参院議員定数を6増やす自民党提出の公職選挙法改正案が参院本会議で可決され、今国会中の成立が確実になった。選挙区の「合区」で押し出される候補者を救済したい自民党お手盛りにほかならない。
さらに、消費税導入を前に国会議員の「身を切る改革」の必要性が指摘される中、その流れに逆行するものだ。抜本的な1票の格差の是正にも程遠い。にもかかわらず自民党の党利党略を優先させて、全ての野党の反対を「数の力」で押し切った。
現行の比例代表は、候補者個人の得票で当落が決まる非拘束名簿式。この一部に優先的な当選順位を事前に決める拘束名簿式を採用するのが、比例代表の「特定枠」だ。
自民案は比例区に特定枠を設けた上で、定数を4増やす。合区した「鳥取・島根」「徳島・高知」の選挙区に擁立できない候補者を特定枠で救済するのが狙いだ。
そもそも1998年の参院選まで拘束名簿式だったのを変えたのは自民党だ。自民党は党員獲得数を名簿順位の判断材料にしていたが、当時の閣僚が企業に党費を肩代わりさせた問題が発覚するなど、名簿順を巡って熾烈(しれつ)な争いが繰り広げられた。そのために金のかからない選挙をうたい、2001年から非拘束名簿式に変えた。それをまた部分的に戻す。ご都合主義としか言いようがない。
16年の前回参院選で合区を導入したのは1票の格差を是正する策だった。しかし「特別枠」で合区の候補者を救済するとしたら元の人数に戻すのと同じで、格差是正につながらないのではないか。
改正案には、最も格差の開いた埼玉選挙区の定数を2増とすることで1票の格差を3倍未満に抑える措置も盛り込まれた。野党の中からは埼玉の2増を受け入れる一方で全体の定数は増やさない「2増2減」案も提出された。全国11ブロックの大選挙区制を提案するなど改革を目指す動きもあった。たった6時間の議論で結論が出せる問題ではない。与野党が議論を尽くして特別枠をやめ、抜本改革につながる案を出す必要があった。
参院の定数が増えるのは沖縄の日本復帰に伴う2増以外にはない。衆参両院では議員定数を減らす議論が長くされてきた。にもかかわらず、定数を増やすことへの納得のいく説明は委員会でもなかった。
このまま定数増すれば議員歳費も増える。世論の反発を予想し、自民は「参院全体の歳費が増大しないよう十分な検討を行う」との付帯決議を可決させたが、歳費を増大させないとは明言していない。自民、公明、民主3党が消費税増税方針に伴って約束したはずの「身を切る改革」はどうなるのか。
選挙制度は民主主義の根幹に関わる。それを政権党が好き勝手に変えてしまう。民主主義を揺るがす暴挙だ。