満蒙開拓の実相 “負の歴史”伝え続ける - 東京新聞(2016年11月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112602000196.html
http://megalodon.jp/2016-1126-1054-50/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2016112602000196.html

長野県阿智(あち)村の満蒙(まんもう)開拓平和記念館を先週、天皇、皇后両陛下が訪問された。戦中、戦後と、苦難を強いられた開拓民の記憶を語り継ぐ場だ。“負の歴史”の実相をさらに多くの人に伝え続けたい。
記念館は、二〇一三年四月にオープンした。
一九三二年、現中国東北部に建国された旧満州国へ渡った開拓民の苦難を伝えようと、その証言や資料を集めた全国で唯一の民間施設でもある。
今回の訪問は両陛下の希望で実現したといい、体験を語り継ぐ三人の引き揚げ者と懇談もした。
その語り部の一人、豊丘村の久保田諫(いさむ)さん(86)の葛藤をたどるだけでも筆舌に尽くしがたい。
約二十七万人とされる開拓民のうち、長野県からは最も多い三万三千人が送り出された。
だが、終戦間際のソ連軍侵攻と敗走中の惨劇の数々によって、帰国できたのは、同県でわずか一万七千人にすぎなかった。
敗戦直後、久保田さんの村の開拓団は、ほぼ女性と子どもだけ。現地の住民の略奪におびえ、逃げきれずに集団自決に走った。母が子をあやめ、親同士が「今度は私を」と続いた。まだ十五歳だった彼も、いやいやそれを手伝う。
七十余人が息絶えた。
彼ともう一人、男二人が残された。一緒に死のうと石を手に、気が遠のくまで額を殴り合ったが、結局、死にきれなかった。
懇談の後、天皇陛下は「こういう歴史があったことを経験のない人にしっかり伝えることは、とても大事なこと」と話した。
これまでも書いてきたが、何度でも書かねばならぬ。
開拓民は国策で渡ったが、開拓とは名ばかり。その多くは現地の人から取り上げた土地や家をあてがわれ、意識せずとも侵略の加担者になっていたことを。
今も残留孤児の支援さえおぼつかないのに、七十余年前と同じように前のめりになっている国のありようや、それに無頓着な空気の危うさが漂っていることも。
偽りの国策に踊らされた過ちを繰り返すまいという地元の熱意が実った記念館だ。
今月、修学旅行なども含めた来館者は十万人を超えたが、知名度は低かった。それが両陛下の来訪でひときわ脚光を浴びた。何より遠目に見ていた地元の人々の関心が高まった。
いわば“負の歴史”ともいえる当時の実相を、揺るがぬ資料や証言でもっと伝えていきたい。

関連サイト)
満蒙開拓平和記念館
http://www.manmoukinenkan.com/

参考サイト)
NPO法人 中国帰国者の会
http://www.kikokusha.com/

(筆洗)映画『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』 - 東京新聞(2016年11月26日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016112602000120.html
http://megalodon.jp/2016-1126-1036-45/www.tokyo-np.co.jp/article/column/hissen/CK2016112602000120.html

ロンドン郊外の美しい町に住むグレタ・ウィントンさんが、夫ニコラスさんの重大な秘密に気づいたのは、結婚して四十年もたってからだった。屋根裏で夫の過去の行いを物語る驚くべき書類を見つけたのだ。
その秘密が公にされると、世界中から「あなたこそ、私の父だ」と名乗りを上げる人が現れ、その数は二百人を超えた。「あなたは、私の祖父だ」という人まで現れて、夫妻を驚かせた。
一九三八年、ナチスの脅威が迫る中、チェコスロバキアを訪れたニコラスさんは、ユダヤ人難民らの姿に衝撃を受けた。各国とも難民受け入れに消極的だったが、彼は「せめて子どもたちだけでも」と里親を探して、六百六十九人の子どもたちを英国に脱出させた。
しかし戦後、ニコラスさんは、救い切れなかった無数の命を思い、自らの英雄的な行いについて、口をつぐんだ。妻にさえ打ち明けなかった。その理由を問われれば、英国紳士らしくユーモアを交え答えた。「夫が妻に言わないことなど、たくさんあるよ」
昨年百六歳で逝った彼と、彼を父と慕う子らの姿を描いた映画『ニコラス・ウィントンと669人の子どもたち』がきょう、東京などで公開される。
映画は、こんな字幕で始まる。<世の中には、観客として見るだけでなく、自身が主人公となる物語もあります>。「戦争と平和」とは、そういう物語なのだろう。

関連サイト)
英国の「シンドラー」と呼ばれた男性が106歳で死去、669人の子供をナチスから救う - IRORIO_JP(2015年7月2日)
http://irorio.jp/daikohkai/20150702/242371/


年金法案審議「何時間やっても同じ」 首相、民進質問に - 朝日新聞(2016年11月25日)

http://www.asahi.com/articles/ASJCT51B3JCTUTFK00Q.html
http://megalodon.jp/2016-1125-1848-18/www.asahi.com/articles/ASJCT51B3JCTUTFK00Q.html

安倍晋三首相は25日午後、公的年金の支給額を引き下げる新しいルールを盛り込んだ年金制度改革法案を審議している衆院厚生労働委員会で、「私が述べたことを全くご理解頂いていないようであれば、(審議を)何時間やっても同じですよ」と発言した。与党は同日中に同法案の委員会採決を予定している。
民進党柚木道義氏の「今日の強行採決は行わないと約束して下さい」という質問に答えた。
首相は「間違った認識で相手を非難しても全く生産的ではない。我々の法案に対する不安をあおるかもしれないが、民進党の支持率が上がるわけじゃない」と法案に反対する民進党への批判を展開した。
安倍政権は、萩生田光一官房副長官が23日、環太平洋経済連携(TPP)の承認案と関連法案の採決強行に対する野党側の国会対応を念頭に田舎のプロレス」「茶番だ」と揶揄(やゆ)している。(南彰)

自衛官の母、国提訴へ 「南スーダン派遣は違憲」 - 朝日新聞(2016年11月25日)

http://www.asahi.com/articles/ASJCT3F4KJCTIIPE003.html
http://megalodon.jp/2016-1126-0910-16/www.asahi.com/articles/ASJCT3F4KJCTIIPE003.html

南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に陸上自衛隊を派遣するのは違憲だとして、陸上自衛官の息子がいる北海道千歳市の50代女性が任務差し止めを国に求める訴訟を30日に札幌地裁に起こす。平和的生存権を侵害され精神的苦痛を受けたとして20万円の国家賠償も求める。原告の代理人弁護士が25日、明らかにした。
原告は、実名でない「平和子(たいらかずこ)」と名乗り、安全保障関連法に反対する活動を続ける女性。次男が陸自東千歳駐屯地に勤務している。
訴状では、PKO協力法は憲法9条に反していると指摘。安全保障関連法に基づき、新たに「駆けつけ警護」の任務が付与されたことにも触れ、武器使用を許容しているのは違憲だと主張する。
弁護団は「安保法制で南スーダン派遣の違憲性はいっそう明確になった。家族の思いを裁判所にくんでもらいたい」と話している。(坂東慎一郎)