戦時下の東北大 文系軽視に異議 学内調査 阿部次郎、桑原武夫ら反骨示す - 東京新聞(2016年4月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000129.html
http://megalodon.jp/2016-0430-0944-17/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000129.html

戦時中の一九四四年八月、東北帝国大学(現東北大)の熊谷岱蔵(たいぞう)総長が、大学の進むべき方向について教員に尋ねたアンケート結果が東北大に残っている。作家の阿部次郎教授や仏文学者の桑原武夫助教授らが、軍事中心、文系軽視の方針に異議を唱えていた。防衛省が研究資金を用意するなど再び大学と軍事が近接し、文系学部の再編も論議される現在、「学問の自由」の原点を見つめ直す史料として再評価の機運が高まる。(望月衣塑子)
東北大学百年史を編さんしたメンバーが九七年、九十二人の教授らの直筆の回答書を大学本部の書庫で発見した。機密扱いの書類であり、戦争推進の意見もあることから、発見当時は遺族の意向に配慮して個人名を公表しなかった。
戦時中は、武器製造のため理系研究が推奨され、文系廃止論が強かった。文系と理系で「命の格差」も生まれた。同大史料館の永田英明准教授によると四三年十二月時点で法文学部の男子学生の72・3%が入隊を課されたのに対し、医学部は1・4%など理系はほとんど徴兵されなかった。
四四年は、学徒動員で大学が事実上、教育機能を失っており、総長のアンケートは、存亡への危機感から行われたとされる。
大正・昭和期の学生のバイブルとされた青春小説「三太郎の日記」を執筆した法文学部の阿部教授は回答書で「あらゆる研究及び教育の継続は、時局の急迫中においても、依然として必要なり」と主張。「大東亜共栄圏の実現は圏内の人心を底から掴(つか)むことなしに期し難い」と、戦争を否定しない形で、文系の充実を訴えた。
戦後さまざまな文化的運動で主導的な役割を担った同学部の桑原助教授も「今次大戦の帰結如何(いかん)に拘(かかわ)らず、欧米的なるものが尚当分世界に支配的勢力を振るうべきは明白なり」とし、研究対象を日本のものに限定する風潮を「国家百年の計にあらず」と批判する。
文系学部には再び、逆風が吹き始めている。昨年文部科学省は国立大学に文系学部の廃止や転換を求めた。「文系軽視」との批判に同省は「誤解を与える表現だった」と釈明したが、八十六大学中二十六校はその後、一部課程の廃止を含む再編の意向を表明した。永田准教授は「大学の在り方は常に社会や政治との関わりの中で問われ続けてきたが、アンケートにみられる人類や社会にとって何が大切かという普遍的、長期的な視点で教育や研究の在り方を考えることが大切だ」と訴える。
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憲法が保障する「自由」や「平等」が揺らぐ現状を問う連載「変質する平和 非立憲社会編」を近く始めます。

金曜日10代叫ぶ 「平和のためできること」 - 東京新聞(2016年4月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000130.html
http://megalodon.jp/2016-0430-0945-15/www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201604/CK2016043002000130.html

安全保障関連法に反対する高校生らのグループ「T−ns SOWL」(ティーンズ・ソウル)が二十九日夜、東京・国会前での初めての抗議デモを行い、約七百人(主催者発表)が集まった。今夏の参院選までをめどに、原則的に毎週金曜午後七時から国会前でデモを行う。
十代の若者が壇上でマイクを握り、リズムに合わせて「憲法守れ」「安保法制反対」などと訴えた。メンバーで、今春に高校を卒業した福田龍紀(りゅうき)さん(18)=東京都=は「公職選挙法の規定で、未成年はビラ配りや電話などでの選挙運動ができない。できるのは意見を言うこと。これが自分たちなりの行動だ」と叫んだ。
デモに参加した高等専門学校四年鈴木大樹(だいき)さん(18)=静岡県=は「これまで日本は平和だったのに、わざわざ武器を持って国外に出る必要はない。自分たちの将来に漠然とした不安がある。若者の声が、関心の無い人にも届いてほしい」と訴えた。また大学二年の男性(20)=川崎市=は「国の将来について、自分よりも年の若い人たちがしっかり考えていることにたくましさを感じる」と話していた。
ティーンズ・ソウルは高校生を中心に昨年七月に発足し、メンバーは現在六十五人。これまで月一回のペースで都内でデモや勉強会などをしていた。

9条生かす道 考えよう 立川「憲法の会」3日講演:東京 - 東京新聞(2016年4月30日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201604/CK2016043002000127.html
http://megalodon.jp/2016-0430-0946-09/www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/list/201604/CK2016043002000127.html

立川市民が中心になって活動する「市民のひろば・憲法の会」(楢崎茂弥代表)が三日、立川市の柴崎学習館(柴崎町二)で「二〇一六年憲法集会」を開く。テーマは「武力で平和は作れない−世界の中で九条を生かす−」。講演のほか、市民によるリレー発言も行われる。
一九八七年から始まった集会は、今年で三十回目。毎年、著名な学者や作家、ジャーナリストらを招いて憲法について考える講演を開催してきた。今回は、一橋大学教授の鵜飼哲(うかいさとし)さんが「『新しい戦争』の時代の日本国憲法−中東・アフリカ・ヨーロッパの激動と東アジア」の演題で話す。
市民の声をつなぐ、という発想で一回目から続くリレー発言では、SEALDs(シールズ)メンバーの学生加藤友志さん(東京学芸大)が「声をあげられない若者たち」のテーマで、学生の政治意識や、アルバイト、学費問題などについて語る。
メンバーは「テロと空爆の応酬が続く世界で、私たちの憲法九条を生かす道があるはず。そんな思いで企画した。地域で憲法を考え続けることも大切」と来場を呼び掛けている。
集会に合わせ、会場の地下ロビーで五月三日まで、憲法問題や基地問題などを考える手作りのパネル展示や沖縄・辺野古の海の写真展なども開催中。集会はホールで午後一時〜五時。  (鈴木貴彦)

(余録)「1日でいいから、半日でいいから… - 毎日新聞(2016年4月30日)

http://mainichi.jp/articles/20160430/ddm/001/070/132000c
http://megalodon.jp/2016-0430-0947-11/mainichi.jp/articles/20160430/ddm/001/070/132000c

「1日でいいから、半日でいいから、子どもをみなくて済む時間がほしい。そう願いながら土曜も日曜も職場で仕事をしていました。先週からずっと終電に近い電車で毎日帰宅しており、通勤だけでも必死です」
大卒3年目の保育士、A子さんから3月末にこんなメールが届いた。「友だちのSNSの投稿を見ると、飲み会とか美容院とかお花見とか。もう全部うらやましくしか思えなくて。ああ、いま心が荒(すさ)んでいるなって思います」
母子家庭で育ち、奨学金を得て大学に通った。就職した保育所の初任給は約15万円。奨学金の返済と生活費でほとんど手元に残らない。それでも「子どもたちと毎日すごせて楽しい」と胸を躍らせていたA子さんだった。
「保育園落ちた」の匿名ブログをきっかけに、待機児童が国政の重要な問題となった。保育士不足を解消するには待遇改善が必要として、政府は給与を月額2%(約6000円)引き上げ、ベテラン保育士には特に手厚く配分することを検討している。
賃金だけでなく、忙しすぎる労働条件の改善も考えるべきだ。どんなに子どもが好きでも、A子さんのように朝から晩まで休日もなく子どもに囲まれていれば疲れるのは当然だ。保育士の資格があっても働いていない「潜在保育士」は70万人もいる。子どもが嫌いで辞めるわけではないのだ。
サクラが散ったころ、A子さんからまたメールが届いた。「保育中に激しい頭痛に襲われて歩けなくなり、来週までお休みをもらうことになりました。子どもたちに本当に申し訳ない気持ちになりました」。政府も自治体も対策を急ぐべきである。

被災と子ども 心開ける場をつくろう - 朝日新聞(2016年4月30日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12335892.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2016-0430-0948-41/www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

いらいらする。黙りこむ。指しゃぶりをする。眠れない。
「また大きな地震が来たらどうしよう」と涙目で訴える。
熊本県を中心に続く地震で、心に傷を受けた子どもたちの様子が報告されている。
大人が災害への対応に追われるなか、子どものストレスは見過ごされがちだ。一人ひとりに目を配り、支える必要がある。
子どもは、気持ちや体験を言葉でうまく伝えられない。しかも反応は一人ひとり違う。
頑張る大人を見て、気持ちを出すのを我慢したり、無理に笑顔を見せたりする子もいる。
まずは安心させ、様子をしっかり見る。話をよく聞き、「大変だったね」「こわかったね」と受けとめる――。
そんな姿勢が、周りの大人には欠かせないと専門家は言う。
大きな災害の後は「心的外傷後ストレス障害」(PTSD)が心配される。後になって、つらい体験を繰り返し思い出したり、集中できなかったりする。
文部科学省東日本大震災翌年の2012年、被災地の保護者を対象に調べた結果では、幼稚園児の20%、小学生の18%、中学生の12%にPTSDを疑われる症状が見られた。
こうした事態をできるだけ防ぐには、子どもが心を開放でき、ストレスを発散できる時間と場所が重要である。
例えば、国際的な子ども支援団体の一員の「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン」は、熊本県益城町の避難所5カ所に「こどもひろば」を開設している。
主に四つから14歳の子どもを受け入れ、集まった子どもたちでお絵かきや紙芝居、ボール遊びなど遊び方を決めていく。
子どもの居場所をつくり、同じ世代の子が一緒に遊ぶことを通じて日常を取り戻せるようにするのが狙いだ。
熊本県西原村にある村立にしはら保育園は、子どもたちに園庭を開放している。
避難所になった学校の校庭が駐車場として使われるなか、子どもが思いきり体を動かせる場を、と考えたという。
被災地では連休明けの再開を目指し、準備を進めている学校が多い。学校のスタートは、子どもが日常を取り戻すためにも重要だが、心の傷がすぐに癒えるわけではない。
阪神大震災後の兵庫県教委の調査では、心のケアが必要と判断された小中学生数がピークを迎えたのは震災3年後だった。
保護者や教員だけでなく、地域や支援団体も含め、さまざまな目で子どもを見守り続けることが欠かせない。