11歳ナビラさん:米無人機「無実の人攻撃」訴えに来日 - 毎日新聞(2015年11月15日)

http://mainichi.jp/select/news/20151116k0000m040092000c.html

2012年に米軍の無人機による「誤爆」で家族を失い、自らも右手を負傷したパキスタン人のナビラ・レフマンさん(11)が15日来日し、毎日新聞の取材に応じた。ナビラさんは無人機で空爆を続ける米国に対し、「戦争を早くやめ、地域に平和をもたらしてほしい。無実の子供や老人を攻撃するのが本当に『いいこと』なのですか」と切々と訴えた。
ナビラさん一家は12年10月、パキスタン北西部・北ワジリスタン管区の実家近くで空爆を受けた。菜園にいた祖母(67)は死亡し、牧草の刈り入れをしていたナビラさんら9人が爆発の破片を受けて負傷した。地元紙は「武装勢力の3人が死亡した」と報じたが、明らかに「誤爆」だった。
ナビラさんは事件を振り返り、「頭から離れない。昨日のことのように空爆の煙とにおいを覚えている」。今でも偵察をしている無人機を見ると「怖くてしかたがない」という。
米国はアフガニスタンからパキスタンに逃げ込んだ武装勢力掃討のため、04年ごろから同管区などで無人機での空爆を開始。ロンドンの非営利団体「調査報道局(BIJ)」によると、同国ではこれまでに421回の無人機攻撃があり、約4000人が殺害された。そのうち約4分の1が民間人だったという。
ナビラさんは13年に米議会公聴会で被害を訴えた。だが議員は5人しか参加せず、状況は変わっていない。
ナビラさんの夢は故郷が平和になることだ。「唯一の解決策は人々が教育を受け、平和について話し合うことだ。教育を受ければ人は医者にだってエンジニアにだってなれるのだから。日本人の皆さんにもそのことを分かってほしい」と話した。
ナビラさんは16日、東京都内で現代イスラム研究センター主催のシンポジウムに出席し、無人機による「誤爆」被害を訴える予定だ。【三木幸治】

週のはじめに考える 9・11からパリ・テロへ - 東京新聞(2015年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111602000131.html
http://megalodon.jp/2015-1116-0942-54/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111602000131.html

パリで起きた大規模なテロを知り、十四年前のアメリカの9・11テロを思い出した人もいるでしょう。世界は何をし、また何をし損なってきたのか。 
9・11テロのあった日、アラブ・イスラム世界の一大中心都市エジプトのカイロはどうだったか。
電話で中産階級の知人に聞くとこうでした。
<街路は喜びにわいている。アメリカに一撃をくれてやったということだ。アメリカはイスラエルを助けパレスチナ人を苦しめている。鬱憤(うっぷん)が晴れたということさ>
◆アラブの街路の歓喜
アメリカの悲嘆と怒り、欧米社会のテロ非難とは裏腹にアラブ・イスラム世界の網の目のような無数の街路は暗い歓喜に満たされていたようなのです。
欧米で憎まれるテロは、世界を異にすれば聖戦という美名で呼ばれることは、それが間違っていようがいまいが、動かせぬ事実でもあるのです。
アメリカはテロに対しいくつもの行動をとりました。
一つはアフガン、イラクの戦争です。ビンラディンを追うアフガン戦争は空爆であっけなく勝利したかのような印象を与えたが、今も終わらず無人空爆は無辜(むこ)の住民の巻き添え死を招いている。
イラク戦争は、サダム・フセインさえいなければ民主化により、自由と経済の活性がテロを締め出すという、いわば無邪気な発想で始まったものの、その泥沼化は目を覆うばかり。最悪の予想すらこえてイスラム国(IS)誕生につながってしまった。
テロとの戦い武力行使の必要性は否定はしませんが、机上の戦争作戦が無視したもの、あるいは過剰に軽視したものの一つは住民感情、街路の世論だったかもしれません。
アメリカが対テロでとったもう一つの行動は、民主化運動の推進でした。それはいわゆる「アラブの春」として結実した。
◆中東学者の見る偏見
エジプトでネット運動をした若者は米国務省の支援を受けています。民主化運動で市民の政治参加を促し、イスラム勢力の言い分も国民参加の政治の場で聞いて問題解決しようというのは正しい。
トルコはそのモデルでした。イスラム勢力が政権を選挙でとり、経済発展もした。政教分離が国是の国で実現したのです。アラブの春は失敗と決めつけるより、なお途上と言ってもいいでしょう。今は混乱していても、民主化の道が閉ざされたわけではありません。
アメリカの対テロ政策は、戦争は無思慮と独善のそしりは免れないとしても、全部が失敗であったとまでは言い切れません。
アラブ・イスラム世界の専門家らは、テロによってもたらされる偏見、その偏見を利用するテロリスト、政治家たちを警戒します。
たとえばフランスの中東学者ジル・ケペル氏は9・11後、仏紙ルモンドにこう記しています。
<今や「9・11」のレンズを通してのみアメリカは世界を見る>(池内恵訳「中東戦記」より)
続けて、イスラエル右派は対テロ戦争の論理を自らの利益のために流用し、パレスチナ人はイスラエル国内で自爆テロを行うことによってアメリカでのイメージ戦争に敗れる危険を冒している、と述べます。
その通りでしょう。
テロはテロの悪以上に悪用されもするのです。世界を善悪二元論に分けて、亀裂を深めれば深めるほど得をするのがテロリストたちです。
冷戦後、世界的ベストセラーになった本に米国政治学者サミュエル・ハンチントン氏の「文明の衝突」があります。よく知られるように、冷戦時代の米ソ対立に代わって、冷戦後は西欧対非西欧(特にイスラム)の対立になると予見して論争を巻き起こし、のちに9・11を予想した書とまでいわれました。
その「文明の衝突」がアラビア語に翻訳され、イスラム過激派の発行物にしばしば引用されているそうです。衝突はテロリストに好都合に違いありません。
衝突が世界史のうえの論考だとしても、それがテロリストたちに悪用されてはならない。テロと憎悪と復讐(ふくしゅう)の負の連鎖にならぬよう世界は、私たちは、踏みとどまらねばならない。そのためには衝突とはまさに逆方向の相互理解が欠かせない。
◆戦争とテロの犠牲者と
それはきれい事にほかならないともいわれそうですが、米欧また日本の社会がどれほどイスラム世界を理解しているのかというとどうでしょう。二つの戦争による膨大な死者と、パリのテロの無辜の犠牲者とをならべて考えることもまた必要ではないでしょうか。おおげさにいえば、世界史の中で今私たちは試されているのです。

福島県議選 自民2減で単独過半数に届かず 民主は3増 - 東京新聞(2015年11月16日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015111602000123.html
http://megalodon.jp/2015-1116-0917-49/www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201511/CK2015111602000123.html

任期満了に伴う福島県議選(定数五八)は十五日投開票され、最大会派の自民党が改選前より二議席減の二十六議席と目標の単独過半数に届かない一方、復興への取り組みや安全保障関連法などをめぐり安倍政権批判を展開した民主党が、三議席増の十五議席となった。投票率は二〇一一年の前回選挙より0・84ポイント低い46・67%で、過去最低。
公明党は改選前と同数の三議席共産党は五議席をそれぞれ維持。社民党は一議席、無所属は八議席だった。改選前一議席の維新の党は、議席を失った。
選挙戦は十九選挙区で七十九人が立候補し、うち八選挙区で無投票だった。

福島県議選:自民過半数届かず 安倍政権批判重く - 毎日新聞(2015年11月16日)

http://mainichi.jp/select/news/20151116k0000e010118000c.html

震災後2回目となる福島県議選と浪江町長選、6市町村議選が15日、投開票された。県議選(定数58)は無投票当選が既に決まっている8選挙区(定数14)を除く11選挙区で新議員が続々と決まった。県議会最大会派の自民は無投票当選を含め26議席と現有より2議席減らし、8年ぶりの過半数獲得はかなわなかった。第2党の民主は15議席と現有より3議席増やし、安倍政権への批判票の取り込みに成功した形となった。県議選の投票率は46・67%(前回47・51%)で過去最低となった。当日有権者数は123万9897人(男60万1350人、女63万8547人)。
県議選11選挙区には65人が立候補し、44議席を争った。立候補者の党派別は自民26人▽民主13人▽共産6人▽公明3人▽維新1人▽社民2人▽無所属14人。
前回選は震災の影響で春の統一地方選から外れ、他の市町村議選とともに日程がずれた。震災と原発事故から約4年8カ月たった今回の選挙戦では、これまでの復興に対する実績や、今後の避難者支援や復興策のあり方などが問われた。
自民は政権与党との連携により復興をさらに進めていくとの主張を展開したが、民主との復興政策の違いが分かりにくく、支持を広げることができなかった。11選挙区で現職17人、新人2人の当選にとどまった。
民主は9月に強行採決で成立した安全保障関連法に対する批判票を取り込もうと自民への批判を強めたことが奏功。11選挙区で現職7人、新人4人、元職1人が当選した。
共産も安倍政権を強く批判し、現職4人、新人1人が当選。公明は現職2人、新人1人が当選を果たした。維新は党本部の分裂騒ぎもあって公認候補は新人1人となったが、落選した。社民は現職1人が当選した。【小林洋子】

臨時国会見送り 国民を軽視していないか - 新潟日報(2015年11月14日)

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20151114217463.html

たった2日間の質疑でどこまで議論が深まったというのか。甚だ疑問といえる。
ところが政府、与党は秋の臨時国会召集について見送る方針を確認した。野党の開会要求に政権側が応じなかったのは2回あるが、いずれも衆院選に伴う特別国会で実質的な審議は行っている。
憲法下で通常国会だけで終わった年はない。召集されないのは極めて異例であり、異常事態と言っていい。
衆参の予算委員会で国会閉会中審査を1日ずつ行えば十分と考えるなら、あまりにも国民を軽視していると言わざるを得ない。
閉会中審査で取り上げられたのは、いずれも国民の暮らしに密接に関わる問題である。
大筋合意に達した環太平洋連携協定(TPP)をめぐっては、野党が攻め切れず、政府側が交渉成果を自画自賛する姿が目立った。
だが、TPPで農家を中心に打撃を受ける関係者は多数いる。
品目によってなぜ関税撤廃と削減に分かれたのかなど、交渉の過程について説明責任を果たし、議論を尽くす必要があるはずだ。
「農業を成長産業化させる」と強調するなら、その具体像を示すことが求められよう。
第3次安倍改造内閣は「1億総活躍社会」を目指す。実現に向けて掲げたのが、強い経済、子育て支援社会保障アベノミクス「新三本の矢」だ。
年内に対策の第1弾を打ち出す方針だが、600兆円の国内総生産(GDP)をはじめ、どう実現させるかはあいまいのままだ。
新閣僚の「政治とカネ」の問題も表面化した。
高木毅復興相が代表を務める自民党支部などが選挙区内で香典と枕花の代金を支出したと政治資金収支報告書に記載していた。公職選挙法に抵触する可能性がある。
本人は「葬儀の日までに弔問し、私費で出した」などと辞任を否定している。ただ地元関係者の証言とは食い違っており、火種は消えていない。
このほか、森山裕農相は談合で指名停止となった複数業者から献金を受けていた。馳浩文部科学相献金問題が明るみに出た。島尻安伊子沖縄北方担当相は選挙区でカレンダーを配布していた。
いずれも本来、国会で真相を明らかにしていかなければならない問題である。
新任閣僚の不祥事への追及をかわすことが臨時国会見送りの背景にあるのだとしたら、言語道断であり、数の力を背景にした政権の横暴だろう。
通常国会で成立した安全保障法への反対も根強い。安倍首相は成立後、誠実に粘り強く、丁寧な説明を行って国民の理解を得ていくと強調したはずだ。
国会の同意人事も先送りになる。マイナンバーの漏えいの有無を監視する国の第三者機関・個人情報保護委員会の増員分4人も含まれている。制度のスタートは1月だ。無責任な対応ではないか。
臨時国会の召集は憲法に定められている。もっと正面から国民と向き合うべきだ。

自民党結成60年 「国民政党」の原点に返れ - 東京新聞(2015年11月15日)

http://www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111502000138.html
http://megalodon.jp/2015-1116-0943-24/www.tokyo-np.co.jp/article/column/editorial/CK2015111502000138.html

六十年前のきょう自由民主党が産声を上げた。以来、昭和から平成までほとんどの間、政権の座にあったが、今も原点である「国民政党」と言えるのか。
一九五五(昭和三十)年十一月十五日、自由民主党、略して自民党の結成大会が、東京・神田にあった中央大学講堂で開かれた。
吉田茂元首相の路線を引き継ぐ自由党と、自主憲法制定を主張する鳩山一郎首相(当時)率いる民主党との「保守合同」である。
政治路線の違いを乗り越えて二つの政党が合同したのは、この年の十月、左右両派の社会党が統一したことへの危機感からだった。
◆ほとんど政権の座に
以来六十年。現職首相の安倍晋三総裁は初代の鳩山氏から数えて二十五代目。共産党に次ぐ長い歴史を持つ老舗政党となった。
歴代総裁の中で首相の座を逸したのは河野洋平谷垣禎一両氏だけ。六十年の党史を通じて、野党経験は約四年にすぎない。政権政党としての長さが際立つ。
自民党がなぜ、これほどまでに長期にわたって政権政党としての党史を刻むことができたのか。
それは、自らを「国民政党」と位置付けたことと無縁ではあるまい。結成時に綱領などとともにつくった「党の性格」は冒頭で「わが党は、国民政党である」と宣言した上で、こう記す。
「わが党は、特定の階級、階層のみの利益を代表し、国内分裂を招く階級政党ではなく、信義と同胞愛に立って、国民全般の利益と幸福のために奉仕し、国民大衆とともに民族の繁栄をもたらそうとする政党である」
特定の階層や利益団体にとどまらず、国民に幅広く支持される政策、時には革新政党の主張をも取り入れて選挙での得票につなげたことが、長期政権を実現する要因の一つだったのだろう。
◆間口広く実力者集う
安倍首相は自著「美しい国へ」で、自民党についてこう記す。
社会民主主義に近い考えの人も混在する間口の広い国民政党だといってよい。なぜなら、自民党は、その成立過程からして、共産主義を否定する人ならだれでも受け入れた政党だったからだ」
さまざまな考えの実力者が参加した間口の広さは、政策・理念の多様性につながり、政策や政治腐敗をめぐって自民党政権への国民の不満が高まっても党内で首相・総裁を代える「疑似政権交代」で不満をかわすことも可能にした。
結成当初、総裁すら一人に絞り込めなかったバラバラの状態は逆に、派閥を率いる実力者たちに切磋琢磨(せっさたくま)を促し、活力を維持した。
激しい派閥抗争は、時には国民を顧みないとの批判を受けながらも、国民政党としての多様性こそが自民党のよき伝統でもあった。
しかし、二〇一二年の第二次安倍内閣発足後、自民党から多様性が失われたとの指摘が、党内外から後を絶たない。例えば、憲法学者の多くが憲法違反と指摘する安全保障法制である。
報道各社の世論調査では法案反対や違憲性を指摘する答えが半数を超えていたが、自民党内からは一部を除き異論は出なかった。
そればかりか党内の会合で、安保法制を批判する報道機関を「懲らしめるには広告料収入をなくせばいい」などと、異論は許さない趣旨の発言が飛び出し、その場で戒める議員すらいなかった。
極め付きは、九月の自民党総裁選である。党内の各派閥・グループは次々と安倍首相の再選支持を表明し、推薦人集めに最後まで奔走していた野田聖子衆院議員は立候補断念に追い込まれた。
議論を自由に戦わせるよりも、異論を認めず「一枚岩」の方が得策という党内の空気である。
こうした自民党の変容には、小選挙区制の導入が影響している。
政党同士が争うこの選挙制度では、候補者の公認や資金・ポスト配分など、政治家の生殺与奪を握る権限が党中枢に集まる。党執行部には異論が唱えにくくなるのは当然の帰結だろう。
加えて、二〇〇九年衆院選での政権転落が党に結束を促した。党内で議論を戦わせるよりも、政敵・民主党の攻撃に政治的エネルギーをより多く注ぐようになった。
◆多様な声に謙虚さを
昨年の衆院選で全有権者数に占める自民党の得票数、いわゆる絶対得票率は小選挙区で24%、比例代表では17%にすぎない。投票率低下があるにせよ、全有権者の二割程度の支持では、幅広く支持を集める国民政党とは言い難い。
自民党が安倍政権下での重圧感から脱するには、立党の原点に返る必要がある。党内の多様性を尊重し、よりよい政策決定に向けて衆知を集める。国民の間に存する多様な意見に謙虚に耳を傾ける。それこそが自民党が国民政党として再生するための王道である。

非正社員4割 待遇改善が急務だ - 朝日新聞(2015年11月16日)

http://www.asahi.com/articles/DA3S12069696.html?ref=editorial_backnumber
http://megalodon.jp/2015-1116-0942-15/www.asahi.com/paper/editorial.html?iref=comtop_pickup_p

パートや派遣などで働く非正社員が昨年、労働者の4割に達した。厚生労働省がそんな実態調査を公表した。
特に増えているのが、パートと、定年後の再雇用者を含む嘱託社員などだ。パートは、非正社員の6割を占める。年金の支給開始年齢の引き上げや、年金自体が先細りしている影響もあるだろう。子育てや介護などとの両立を理由に挙げる人も増えている。
パートに出るのは家計の助けにするため。そんなイメージからも実態は離れつつあるようだ。生活を支える主な収入が「自分自身の収入」という人が非正社員の48%に上る。非正社員の「質」も変わってきていると言ってよいのではないか。
問題は、そうした変化に非正社員の待遇や社会の仕組みが追いついていないことだ。
昨年の賃金構造基本統計によれば、非正社員の平均賃金は正社員の約6割。20代、30代の男性で配偶者がいる割合は正社員の半分以下という統計もある。
非正社員が増えるのに伴って、低い賃金、不安定な収入のために結婚や出産をためらう人たちが増えたのでは、少子化の改善など望むべくもない。
まずは、非正社員の賃金を底上げし、正社員との格差をできるだけ小さくすることだ。同じ仕事をしているなら、それに見合った賃金を支払うべきだ。
問題は賃金にとどまらない。
会社員が加入する厚生年金に入っている人は、非正社員の5割程度。国民年金になると保険料は収入にかかわらず毎月一定額なので負担感が大きく、保険料の未納が増える一因とも言われている。
厚生年金の傘から漏れ、国民年金の保険料もきちんと納められない現状を放置すれば、将来、無年金や低年金で貧困に陥ることにつながる。今でも生活保護受給世帯の約半分は高齢世帯だ。高齢者の貧困問題を一層、深刻にしかねない問題だ。
子育てや介護と両立させるために正社員をあきらめる人たちもいる。仕事と子育てや介護の両立を後押しする政策の充実、正社員の働き方の見直しも必要だろう。意に反して非正社員として働いている人たちのためには、教育や訓練の機会を増やしたり、正社員になるのを後押ししたりする政策も大切だ。
同じ調査で、非正社員を雇う理由のトップは「賃金の節約のため」(39%)だ。雇う側の本音が表れた数字である。多様な働き方を、企業にとって手軽で安上がりな雇用の手段にとどめてしまってはならない。