臨時国会見送り 国民を軽視していないか - 新潟日報(2015年11月14日)

http://www.niigata-nippo.co.jp/opinion/editorial/20151114217463.html

たった2日間の質疑でどこまで議論が深まったというのか。甚だ疑問といえる。
ところが政府、与党は秋の臨時国会召集について見送る方針を確認した。野党の開会要求に政権側が応じなかったのは2回あるが、いずれも衆院選に伴う特別国会で実質的な審議は行っている。
憲法下で通常国会だけで終わった年はない。召集されないのは極めて異例であり、異常事態と言っていい。
衆参の予算委員会で国会閉会中審査を1日ずつ行えば十分と考えるなら、あまりにも国民を軽視していると言わざるを得ない。
閉会中審査で取り上げられたのは、いずれも国民の暮らしに密接に関わる問題である。
大筋合意に達した環太平洋連携協定(TPP)をめぐっては、野党が攻め切れず、政府側が交渉成果を自画自賛する姿が目立った。
だが、TPPで農家を中心に打撃を受ける関係者は多数いる。
品目によってなぜ関税撤廃と削減に分かれたのかなど、交渉の過程について説明責任を果たし、議論を尽くす必要があるはずだ。
「農業を成長産業化させる」と強調するなら、その具体像を示すことが求められよう。
第3次安倍改造内閣は「1億総活躍社会」を目指す。実現に向けて掲げたのが、強い経済、子育て支援社会保障アベノミクス「新三本の矢」だ。
年内に対策の第1弾を打ち出す方針だが、600兆円の国内総生産(GDP)をはじめ、どう実現させるかはあいまいのままだ。
新閣僚の「政治とカネ」の問題も表面化した。
高木毅復興相が代表を務める自民党支部などが選挙区内で香典と枕花の代金を支出したと政治資金収支報告書に記載していた。公職選挙法に抵触する可能性がある。
本人は「葬儀の日までに弔問し、私費で出した」などと辞任を否定している。ただ地元関係者の証言とは食い違っており、火種は消えていない。
このほか、森山裕農相は談合で指名停止となった複数業者から献金を受けていた。馳浩文部科学相献金問題が明るみに出た。島尻安伊子沖縄北方担当相は選挙区でカレンダーを配布していた。
いずれも本来、国会で真相を明らかにしていかなければならない問題である。
新任閣僚の不祥事への追及をかわすことが臨時国会見送りの背景にあるのだとしたら、言語道断であり、数の力を背景にした政権の横暴だろう。
通常国会で成立した安全保障法への反対も根強い。安倍首相は成立後、誠実に粘り強く、丁寧な説明を行って国民の理解を得ていくと強調したはずだ。
国会の同意人事も先送りになる。マイナンバーの漏えいの有無を監視する国の第三者機関・個人情報保護委員会の増員分4人も含まれている。制度のスタートは1月だ。無責任な対応ではないか。
臨時国会の召集は憲法に定められている。もっと正面から国民と向き合うべきだ。