非正社員4割 待遇改善が急務だ - 朝日新聞(2015年11月16日)

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パートや派遣などで働く非正社員が昨年、労働者の4割に達した。厚生労働省がそんな実態調査を公表した。
特に増えているのが、パートと、定年後の再雇用者を含む嘱託社員などだ。パートは、非正社員の6割を占める。年金の支給開始年齢の引き上げや、年金自体が先細りしている影響もあるだろう。子育てや介護などとの両立を理由に挙げる人も増えている。
パートに出るのは家計の助けにするため。そんなイメージからも実態は離れつつあるようだ。生活を支える主な収入が「自分自身の収入」という人が非正社員の48%に上る。非正社員の「質」も変わってきていると言ってよいのではないか。
問題は、そうした変化に非正社員の待遇や社会の仕組みが追いついていないことだ。
昨年の賃金構造基本統計によれば、非正社員の平均賃金は正社員の約6割。20代、30代の男性で配偶者がいる割合は正社員の半分以下という統計もある。
非正社員が増えるのに伴って、低い賃金、不安定な収入のために結婚や出産をためらう人たちが増えたのでは、少子化の改善など望むべくもない。
まずは、非正社員の賃金を底上げし、正社員との格差をできるだけ小さくすることだ。同じ仕事をしているなら、それに見合った賃金を支払うべきだ。
問題は賃金にとどまらない。
会社員が加入する厚生年金に入っている人は、非正社員の5割程度。国民年金になると保険料は収入にかかわらず毎月一定額なので負担感が大きく、保険料の未納が増える一因とも言われている。
厚生年金の傘から漏れ、国民年金の保険料もきちんと納められない現状を放置すれば、将来、無年金や低年金で貧困に陥ることにつながる。今でも生活保護受給世帯の約半分は高齢世帯だ。高齢者の貧困問題を一層、深刻にしかねない問題だ。
子育てや介護と両立させるために正社員をあきらめる人たちもいる。仕事と子育てや介護の両立を後押しする政策の充実、正社員の働き方の見直しも必要だろう。意に反して非正社員として働いている人たちのためには、教育や訓練の機会を増やしたり、正社員になるのを後押ししたりする政策も大切だ。
同じ調査で、非正社員を雇う理由のトップは「賃金の節約のため」(39%)だ。雇う側の本音が表れた数字である。多様な働き方を、企業にとって手軽で安上がりな雇用の手段にとどめてしまってはならない。