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ヨルダン川西岸で生活を追われ、命を脅かされるパレスチナ人を記録し、米アカデミー賞も受賞したドキュメンタリー映画「ノ-・アザ-・ランド 故郷は他にない」。出演した31歳のパレスチナ青年がイスラエルの入植者に射殺された
▼ヨルダン川西岸はパレスチナ自治区だが、イスラエル軍が聖地エルサレムを実効支配する。路上画家のバンクシーは「花を投げる人」などの作品やホテル建設を通じて、西岸と長年関わる
▼イスラエル軍の擁護も盾に、入植者による暴力は増幅する。暴徒化した若者がパレスチナ住民の生活を妨害し、退去に追い込む。この「ヒルトップ・ユース」と呼ばれる集団ら極右入植者にはイスラエル政府も手を焼く
▼死者が6万人を超えるガザと違法な追い出しが横行する西岸。「民族浄化」としか呼びようのない実態を前に、ユダヤ人へのホロコーストを思い返しながら思考は立ち尽くす
▼故郷の渇望や苛烈な因果にどう向き合うか、まだ分からない。しかしイスラエル右派政権の中からさらなる極右集団が萌芽し力を伸ばすさまに、暴力は別の暴力しか生まないと何度もかみしめる。