<金口木舌>孤高の存在 - 琉球新報(2024年3月21日)

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NHKで放映中の連続テレビ小説「ブギウギ」で歌手・茨田りつ子のモデルである淡谷のり子さんにはこんな逸話がある。「ぜいたくは敵だ」とスローガンが叫ばれる中で、淡谷さんはもんぺを拒み、ドレスを着た
▼派手な衣装の淡谷さんに軍人は刀を突きつけ衣装を責めるがひるまない。
「このドレスが私の軍服です」。命に関わる脅しにも屈せず「私を殺して戦争に勝てるならどうぞ」
▼歌手としての使命を心得て信念を曲げない。何者をも恐れぬ姿勢に感服する。そんな逸話を思い出したのは、東京都の横田基地の問題に取り組む市民に話を聞いた時のこと
▼「沖縄とこっちで決定的に違うのはこれ」。そう話して、市民が示したのが玉城デニー知事の16日付本紙の会見記事。米軍のオスプレイ飛行再開に「強い憤り」を表明し、配備撤回を求めたと記事にある
▼県内では当たり前の光景だと思っていたが、政府へ盾突く知事はそうはいない。米軍基地の集中する沖縄の県政運営で、知事は時に孤高の存在となる。一徹だった淡谷さんと、どこかで通じ合う。