<金口木舌>鏡 - 琉球新報(2023年9月14日)

https://ryukyushimpo.jp/column/entry-1784973.html

よその子どもの振る舞いにあきれて「親の顔が見たい」。人を見下すような嫌な響きがする言葉だ。これはどうだろう。「子は親を映す鏡」。こう言われると、我が子が映し出す自分の姿が気になってくる
 
▼残念な出来事だった。沖縄本島中部の中学生が大麻所持の疑いで保護観察となった。「自分で吸うため」という。本島南部では強盗致傷の疑いで少年らが逮捕された。ここに大人は何を見るべきか
▼十数年前、ある少年事件を担当する弁護人が話していた。「犯罪を起こすのは必然」。親は育児を放棄し、食にも困る環境に少年は置かれていた。「周辺も異変に気付いていたはず」とも
▼親を選べない不運を指す「親ガチャに外れた」という言葉が一時はやった。切ない言葉を吐く子どもの気持ちに目を向けたい。親の無責任と、それを放置する歪(ゆが)んだ社会が見えてこないか
▼「親の背をみて子は育つ」という。親だけでなく、子を救えぬ社会は病んでいよう。中学生や少年の行為を特異な事例として済ませてはならない。自省を促すための鏡が社会に必要だ。