<ぎろんの森>サミットは成功だったのか - 東京新聞(2023年5月27日)

https://www.tokyo-np.co.jp/article/252723

G7広島サミットが終わり、岸田文雄首相は「核兵器のない世界に向けた国際的な機運をいま一度高めることができた」と成果を強調しています。

四月の衆参五補選で自民党が四勝し、内閣支持率も上昇傾向に転じていることから、首相が近く衆院解散・総選挙に踏み切るのではないか、との観測も広がります。

核廃絶・核軍縮が最大のテーマだったはずの被爆地・広島でのサミットは本当に、政府が胸を張るような成功だったと言えるのでしょうか。

東京新聞は二十三日の社説「首相とサミット 核廃絶の覚悟が見えぬ」で「G7自身の核保有を正当化した『広島ビジョン』には失望の声も上がる」「岸田文雄首相主導の広島開催だったが、核廃絶の覚悟はいまだ見えてこない」と指摘しました。

保有国を含むG7首脳が被爆地・広島に集い、被爆の実相に触れ、「核兵器のない世界」への決意を共有したことの意義は認めます。

しかし、サミットの成果をまとめた首脳声明に先立ち、首相が発表した「核軍縮に関する広島ビジョン」はG7自身の核保有を正当化し、核抑止力を前提とするもので、核兵器禁止条約にも言及していません。被爆者や広島の人々が批判するのは当然です。

読者から「使ってはいけない核は廃絶しなければならない。持っていれば使いたくなる国が必ず現れる」との声が届きます。全く同感です。

本紙は二十五日、広島に拠点を置く中国新聞の社説「被爆地の明日 核廃絶の原点は変わらぬ」を転載しました。

広島ビジョンが同条約に触れていないことを「許しがたい」と批判し、「核兵器による悲劇を再び起こさないためには、核廃絶以外に道はないのは明らかだ」と訴える内容で、被爆地の思いを本紙読者にも伝える必要があると考えたからです。

核なき世界を目指す志も、具体的行動を伴わなければ画餅に終わります。政権がいくら「サミット成功」と宣伝しても、言論機関として惑わされてはならない、との思いを強くしています。 (と)