<金口木舌>沖縄の日常風景 - 琉球新報(2023年5月21日)

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イーストウーマン」という県出身ミュージシャンのバンドがかつて活動していた。東京に拠点を置きながら沖縄を描いた楽曲を多く生み出した。作品の随所に故郷への思いがにじむ

▼アルバム収録曲「赤い土」はガジュマルやシーサーなどの表現を歌詞に刻む。沖縄の原風景が浮かび、三線の音色が世界観を際立たせる。歌詞には空に響く「爆音」と基地を想起させる「フェンス」も登場する
▼青い海や白い砂浜といった、よく見かけるようなイメージとは少し異なる。沖縄で生まれ育ったバンドが描く島の姿はリアリティーがある。そして、基地が私たちの日常生活に溶け込んでいることに改めて気づく
▼米軍嘉手納基地では戦闘機の巡回配備で「爆音」が増す。フェンスの向こうが原因とみられる環境汚染があっても、県民は調査することができない。非日常であるべき光景が当たり前にある
▼豊かな自然に多様な文化。世界に誇れる要素が多い沖縄だからこそ基地の存在が異様に映る。いつの日か、この美しい島から基地の影がなくなることを願う。