【政界地獄耳】参院のメンツを立てて国益を損ねた? - 日刊スポーツ(2023年3月3日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202303030000045.html

★首相と全閣僚が出席する「基本的質疑」が1日、参院予算委員会で行われたため、同日からインドで始まったG20外相会合に日本の外相・林芳正は出席できなかった。先月28日の会見で林は「G7議長国としてしっかり発信したい」とやる気満々。会議はロシアや中国も出席する「極めて重要な外交の場」といえるが、憲法63条で閣僚の議院出席の権利と義務「首相、閣僚は答弁・出席を求められたときは、議院に出席しなくてはならない」が国会の優先を決めているからだ。だが野党から林に質問はなく、自民党からの質問がたった1回、53秒だった。

★2日午前の参院予算委員会で首相・岸田文雄は「出席する可能性を追求したが、国会を含む国内での公務などを総合的に勘案した」とした。だが同日昼に開かれた自民党麻生派の会合で党副総裁・麻生太郎は「G20外務大臣会合に出られなくなったっていうことはどうかねと。『国会論議で』というのを理由にっていうのは、どういう反響を私たちとしては考えるべきか、ちょいと考えないかんなと、正直な実感です」と発言。党内にはどうやら林を止めたのは野党や憲法の縛りではなく、自民党参院幹事長・世耕弘成の「全閣僚出席の基本的質疑は非常に重要度が高い。外相から直接答えを聞いてみたいという議員や国民も多い」、自民党麻生派参院予算委筆頭理事・藤川政人は「いたずらに外交日程に穴をあけるつもりはないが、基本的質疑は国会のルールを優先してもらう」という理屈で押し切ったのではないか。

★ところがインドで3日に開かれる日米豪印4カ国の協力枠組み「クアッド」の外相会合に林は出席する。党内では衆院で予算が上がり、参院が軽視されることを嫌った世耕のプライド。参院から衆院に鞍替えした林への嫌がらせ。世耕も衆院鞍替えを模索したがうまくいかない八つ当たりとも。参院のメンツを立て国益を損ねたのではないかと麻生は言いたかったのだろう。(K)※敬称略