【政界地獄耳】「反撃能力」まやかしでしかない世論調査 国民が納得しているとは言い難い - 日刊スポーツ(2022年12月28日)

https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202212280000048.html

★17、18日に実施した朝日新聞の全国世論調査では敵基地攻撃能力(反撃能力)保有の賛否は「賛成」56%、「反対」38%。同日に実施した産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査でも「反撃能力」の保有の是非を尋ねたところ、全体の約6割が「持つべきだ」と回答。23日から25日にかけ行った日本経済新聞社テレビ東京世論調査では「反撃能力」の保有決定は賛成60%、反対31%だった。

★朝日はわざわざ「反撃能力」と言わず「外国が日本を攻撃しようとした場合に、その国のミサイル基地などに打撃を与える能力を自衛隊がもつことに賛成ですか」と問うた。それでも6割程度の賛成を得ている。朝日が期待したように時の政権はいささか法律の内容そのままに法案を表記するのははばかられるとしたのか、政府が新たに命名した法案が用意された。安保法制を平和安全法制に、共謀罪はテロ等組織犯罪準備罪と実態を表さぬ名がつけられた。敵基地攻撃能力も反撃能力とされたが、ここにも法制化のトラップが仕掛けられていた。

自民党関係者が言う。「この敵基地攻撃能力も反撃能力もまやかしでしかない。政府が強引に進めたのは自民党内でも古くから議論がある予防的先制攻撃と自衛的先制攻撃の議論が実態に即している」。差し迫った脅威ではないが放置すれば将来、受け入れ難い脅威をもたらす可能性のある相手を攻撃する「予防攻撃」は国際法上違法とみなされている。一方、国連憲章第51条中の「固有の権利」を理屈に自衛権は国家の重大な権利とする考えと、同51条中の「武力攻撃が発生した場合」が条件なら「武力攻撃が発生」していない場合の自衛権行使はできないなどの議論が続いている。これは世界的議論で国際世論に一石を投じるほどの現実が我が国周辺にあるのかといえば、はなはだ疑問だ。となれば世論調査こそが表層的過ぎて、国民が納得しているとは言い難い。(K)※敬称略