<金口木舌>目を背けても - 琉球新報聞(2022年10月22日)

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普天間基地は田んぼの中にあり、周りには何もなかった」。2015年6月、自民党若手議員の勉強会で作家の百田尚樹氏が言い放った。全くのデマだ

▼あれから7年。またデマが拡散された。ネット掲示板2ちゃんねる」の開設者として知られるひろゆき西村博之)氏がユーチューブで同様の発言をした。誤りを指摘され、釈明したが、擁護する人もいる

▼同様の言葉が使われ始めたのは05年ごろだ。在沖米四軍調整官、米国務省日本部長らのほか、18年には米海兵隊総司令官までも放言。デマは再生産されている

▼実際の普天間飛行場沖縄戦のさなか、米軍が住民を収容所に隔離して建設された。今、基地がある場所は人々が暮らしていた。市史などを調べればすぐに分かる

▼飛行場造成直前に人がいないのは当然だ。だが、以前は人々の歴史や文化が紡がれていた。それを無視するのは暴論だ。いくら目を背けても、そこにある事実はなくならない。都合のいい部分だけを切り取り続けると、やがて何も見えなくなるのではないだろうか。