<金口木舌>変わらぬ強行 - 琉球新報(2022年8月2日)

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「区誌は面白い」。生前のインタビューで、大田昌秀元知事が力説していた。地域の戦争体験や基地を巡る動きは区誌が最も詳しいという

▼米軍普天間飛行場の返還を強く訴え、日米両政府の返還合意の道筋をつくった大田氏。その際、県内移設への協力を橋本龍太郎元首相から求められたが「即答できない」と突っぱねた
▼政府が移設先を名護市辺野古に決めたのは「沖縄で唯一、基地を受け入れたことのある地域だから」。関係者の間で流布される言説だが、区誌をひもとけば内情は異なることが分かる
キャンプ・シュワブの軍用地接収は米国民政府の脅しが背景にあったことを辺野古誌が記している。「これ以上反対を続行するならば強制立ち退き行使も辞さず、一切の補償も拒否する」
▼基地建設を条件付きで容認せざるを得なくなった状況は今と重なる。区行政委員を務め、移設容認の立場だった宮城安秀市議が亡くなった。告別式には政府関係者から弔電が届いたが、区の生活向上を訴えて補償を求めた宮城さんの願いは届かないままだ。