<金口木舌>軍夫の沖縄戦 - 琉球新報(2021年6月25日)

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目隠しをされた男性と悲しむ女性、そして武器を振り上げる兵士。読谷村瀬名波にある恨(ハン)之碑に刻まれている、彫刻家の金城実さんが作ったレリーフだ。19日に追悼会が開かれ、朝鮮半島から連行された軍夫、慰安婦らを関係者が慰霊した

レリーフ阿嘉島で軍夫12人が「畑からイモを盗んだ」として日本兵に銃殺されたという証言を基に作られた。証言者は沖縄に連行されていた元軍夫の姜仁昌(カンインチャン)さんだ
▼姜さんは沖縄で爆弾を運ばされ、仲間の遺体を埋める手伝いもさせられた。2006年に碑が完成した際には「だまされて沖縄に連れてこられ、差別を受け、無念だった」「仲間の収骨がされていないことは心に突き刺さっている」と語った
朝鮮半島から沖縄戦に連行された人々がどれだけいたのか。その後どうなったのか。解明されていないことは多い
▼沖縄全戦没者追悼式でのビデオメッセージで、菅義偉首相は「罪もない民間人を含め20万人もの尊い命が失われた」と述べた。あえて「罪もない」と表現した意図は定かでないが「罪もない」のは朝鮮半島から連行された軍夫も同じだ
▼韓国で元慰安婦や元徴用工らが賠償を求める訴訟が相次いでいる。政府は「解決済み」との立場だが、対立ばかりでは理解し合えない。実態解明への努力を続け、両国民が納得できる解決策を探るのが政治の役割ではないか。