<南風>「差別」を書いた卒業文集は… - 琉球新報(2021年4月15日)

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私の中学卒業の文集に寄せた題名は「差別」。子供ながらに真剣に考え、書いたその文章は力作だった。生涯、差別と向き合って生き抜いた叔父の古波津英興の影響が大きい。小学生の頃に東京で開かれた叔父の講演会に行き、差別をテーマにした話を聞いたときの経験が骨の髄まで染み込んでいた。
「差別」の題名は中学の先生には衝撃的で、大問題になった。2度にわたり職員会議で議論された。理科と社会科の一部の女性教師からは「新垣君の卒業文集を読んだよ。いろいろ考えさせられたし勉強になったわ」と褒められた。だが、そんな先生ばかりではなかった。国語の授業で50代後半の男性教師は、「新垣、立て! あの文章はなんだ。誰が差別しているんだ」と、めちゃくちゃ怒られた。
そんなことがあって、私の文章は卒業文集には載せないことが職員会議で決まり、他のテーマに変えるよう指導された。頭に来ていた私は、卒業文集にはあの国語の先生の似顔絵を描いた。テーマは「こんな大人にはなりたくない」と。同級生は、私の度胸にびっくりしていた。
私自身は強かったから差別された記憶はないが、同じクラスの沖縄出身の女の子はいじめにあった。私は、うまくかばってあげることができなくて、その後悔の気持ちが強くなって卒業文集に書いたのだ。差別はいけないと仲間には分かってもらいたくて。
本土に移り住んだウチナーンチュじゃなかったら分からない経験だ。でも、あの悲惨な戦争から立ち直り、差別した人でさえファンにしてしまうウチナーンチュはすごい。さすが大交易時代を築いた琉球王国の末裔(まつえい)。だからコロナにも絶対負けないよ。卒業文集にあの教師の似顔絵を描いた中学3年生の自分に万歳! 本土の人を差別からファンに変えた沖縄県民万歳!(新垣進、関東沖縄経営者協会会長)