https://mainichi.jp/articles/20201129/ddm/001/070/090000c
カメジローこと瀬長亀次郎は戦後の沖縄で米軍の占領政策と闘い、本土復帰に尽くした政治家だ。1971年のいわゆる沖縄国会で、衆院議員として佐藤栄作首相にこんな質問をした。
祖国復帰の原点について申し上げたい。摩文仁(まぶに)の戦没者慰霊塔のもとに、何万という白骨がかき集められ、入っている。いまは風化して大地に変わっている。遺骨は土と化している。大地は何を求めているか。涙ではない。再び沖縄を戦場にするな、平和な島を取り返す。これが原点だ。
3年前公開の映画「米軍(アメリカ)が最も恐れた男 その名は、カメジロー」でも、この日の委員会審議の映像が使われていたので、ご記憶の方もいるかもしれない。
半世紀近く前の国会のことを思い出したのは、菅義偉首相になって初めての国会審議を聞いたからだ。参院本会議の代表質問で、小池晃氏が米軍普天間飛行場の辺野古移設工事に使われる埋め立て土砂のことを取り上げていた。
国は、県内調達分の土砂を、北部に加え糸満市など南部からも採取できるよう計画を変更しようとしている。だが、沖縄戦の激戦地となった南部には、多くの遺骨が埋まったままだ。遺骨を土砂と一緒に埋め立てに使うことへの批判について聞かれた首相は、こう答えた。「関係法令で認められた採石場から調達されると承知している」
カメジローが批判的に語っていた「涙」は、首相や閣僚が沖縄への慰霊で流す涙のこと。だがそんな姿すら、もはや遠い昔のことのようだ。