(「宝の海」土砂投入)保護こそ未来への責任 - 沖縄タイムス(2018年12月14日)

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そこまでやるか。
そこまで強引に工事を進めるのか。
玉城デニー知事が民主主義の原則に沿って「話し合いによる解決」を求めているのに、そこまで県民の代表を小ばかにしたような態度をとるのか。
名護市辺野古の新基地建設工事を巡り、岩屋毅防衛相は玉城知事と会談し、予定通りきょう14日、沿岸部に土砂を投入すると通告した。
安倍晋三首相の言う「沖縄に寄り添う」という言葉が、出任せの巧言令色のたぐいでないのなら、首相は工事を中止し、沖縄で知事に会うべきだ。さらに記者会見を開いて沖縄の記者団の積もり積もった疑問に正面から答えるべきである。
米軍普天間飛行場辺野古移設は、米軍にとっては「日本政府の予算で、望む場所に望む基地ができる」ことを意味するが、沖縄にとっては基地の北部集約化であり、恒久化を意味する。
当初、日米両政府が合意した案は、既存の米軍基地内に新たなヘリポートを整備するというものだった。それがいつの間にか、米国の思惑と日本政府の判断、地元の意向が複雑に絡み合って、V字型の滑走路などを持つ巨大基地へと変わっていったのだ。
辺野古に移せば、辺野古で事件事故が起き、何の解決にもならない」
1年前、米軍ヘリの部品が落下する事故があった、宜野湾市の保育園の保護者がそう語っていた。

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防衛省は、県の埋め立て承認撤回で中断していた工事を先月、再開させた。国交相が撤回の効力を一時的に止める執行停止を決定したからだ。
防衛省の申し立てを、同じ国の機関である国交省が認めるというもので、県は自作自演のような決定を「違法」として、国地方係争処理委員会に審査を申し出ている。
三者機関である係争委の話し合いはこれからだが、土砂投入の日に初会合が予定されているのは偶然なのか。
埋め立て承認の際、国と交わした環境保全などの「留意事項」が守られていないことも懸念される。ジュゴンの保護対策一つをとっても、3頭のうち2頭の行方が分からなくなっているなど影響が心配される。留意事項に従い工事を中止し、ジュゴン調査を進めるのがあるべき姿だ。
「空の主権」も取り戻せていないのに、今度は県の自然環境保全指針で厳正な保護を図るランク1の海が埋め立てられようとしている。
軍事基地建設のため、約260種の絶滅危惧種を含む5800種以上の海洋生物が生息する「宝の海」に土砂を投入するのは、愚行以外のなにものでもない。

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県の試算によると、埋め立てに5年、軟弱地盤の改良に5年、その後の作業に3年、新基地完成までは13年もかかる。政府が強調する普天間の一日も早い危険性の除去は、説得力を欠いている。
玉城知事は記者会見で、なぜ新基地建設に反対するのかをあらためて説明し、県の考えを分かりやすく全国に発信すべきだ。