<金口木舌>御包みと里親 - 琉球新報(2020年10月11日)

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首がすわっていない赤ん坊がぐずついたり、風呂で落ち着かなくなったりした場合、毛布やガーゼでくるむと安心したかのように静かになる。「御包(おくる)み」は紀元前から愛用されるベビー用品だ

▼2007年12月、沖縄市で生後間もない男児の遺体が発見され、ビニール袋に包まれ海面に浮かんでいた。現場を訪れると沖縄でも冬風が身に染みた。事件を思い出す度、今も胸が痛い
▼その1年5カ月後、糸満市の海岸でも新生児の女児の遺体が見つかった。15年には、うるま市でもビニール袋に包まれた新生児が遺棄されたが、生命に別条はなかっただけでも幸いだった。類似事件は県内でもたびたび起きている
▼摘発された一部事件では経済的事情や望まない妊娠などの背景があり、周囲に相談できないまま自宅で出産していた。児童相談所などのセーフティーネットに関する情報は当事者には届いていなかったのか
▼里親制度はさまざまな事情で家族と離れて暮らす子どもを家庭に迎え入れ、温かい愛情を持って養育する。社会的養護が必要な子は全国で約4万5千人で、里親への委託率は2割。今月は里親月間で周知活動も取り組まれている
▼火葬手続きで必要なため、遺体で見つかった沖縄市男児には「仲宗根希望(のぞむ)」、糸満市の女児には「前端海子」と役所に名付けられた。ぬくもりと共に忘れてはいけない名がある。