https://www.nikkansports.com/general/column/jigokumimi/news/202009020000028.html
★官房長官・菅義偉の勢いが止まらない。新聞辞令では新総理・菅の下、官房長官に防衛相・河野太郎や環境相・小泉進次郎の入閣など、すでに神奈川県連内閣の様相だ。一部の党幹部たちだけですべてを決める自民党の総裁選びを見ていると、元首相・小渕恵三死後の次期首相選出の闇を想起させるが、自民党の体質そのものがその名に反してまったく自由でも民主的でもないことがよく分かる。なぜなら、菅と距離のある政治家が菅支持を続々と表明しているからだ。7年8カ月の官房長官の仕事は党幹事長に匹敵する情報と権力を持ったということなのかもしれない。
★ただ、自民党も新しい何かを模索し始めている。党青年局長・小林史明は「このままでは自民党は国民から見放されてしまうのではないか」と強い危機感を表明。菅のおひざ元の神奈川県連では県連会長・小此木八郎が「党員投票を加えた『公選』による総裁選の実施を強く要請する」とし、要請が受け入れられない場合は、県連所属の党員・党友約6万3000人による郵便投票(予備選)を県連独自に実施すると言いだした。確かにこのままでは総裁選挙も両院議員総会も不要で、すでに派閥上は菅内閣が成立しているといえる。
★一番、不可思議なのは党内各派の菅への地滑り的支持表明だが、そこに拍車をかけたのが「コロナ禍の中で大規模な総裁選をするのは難しい」という理屈だ。確かに100万人規模の投票用紙の作成、送付など手間はかかる。しかし今どき、一国の首相を決めようという時に派閥の領袖(りょうしゅう)の支持だけで決めていいのかと考えるのが普通の発想だろう。それを党幹事長が強行するのなら、政界でささやかれる10月11日告示、同25日投開票の早期解散説はどう説明するのか。そもそも首相・安倍晋三の辞任表明時のコロナ対策への道筋は「秋冬のコロナ拡大対策」だった。それを無視して解散総選挙を仕掛ける幹事長と官房長官に安倍後継の資格はあるのか。(K)※敬称略