普天間問題提言 従来計画転換する機に - 北海道新聞(2020年4月1日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/408091
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沖縄県が昨年設置した安全保障の専門家らによる「米軍基地問題に関する万国津梁(しんりょう)会議」が普天間飛行場の危険性除去に向け、玉城デニー知事に提言書を出した。
提言では、名護市辺野古への移設を前提とせず、沖縄の米海兵隊をアジア太平洋各地に分散することで米軍基地の整理縮小を加速させるよう、日米両政府に求めた。
辺野古沿岸部では軟弱地盤が見つかり、改良工事のために米軍が運用できるまでに少なくとも12年はかかると政府は説明している。
普天間返還をこれ以上先送りすることは許されず、当然の提言だ。
知事は提言で具体的に示された安全保障上の分析も踏まえ、安倍晋三政権に辺野古移設の見直しを改めて求めるという。
政府は真摯(しんし)に受け止め、辺野古移設に代わる解決策について、米政府や沖縄県と早急に協議を始めるべきだ。
会議は元防衛官僚で内閣官房副長官補を務めた柳沢協二氏を委員長に、国内外の安保専門家ら7人で構成する。
提言では辺野古移設について、1兆円近くに膨らむ工費も挙げて「技術的、財政的にも完成が困難」と結論づけた。
移設の本来の目的は普天間の運用停止にあり「大義は失われている」との指摘はもっともだ。
政府が耳を傾けるべきは、安全保障環境の変化を分析し、軍事的合理性の観点から沖縄への基地集中を見直す必要性を記した点だ。
その大きな要因には、中国がミサイル能力を向上させていることがある。北朝鮮による核・ミサイル開発も忘れてはならない。
基地の集中は米軍が直面する危険をいっそう高めかねず、提言では恒久的な基地よりも、西太平洋に分散化し、有事などの際に柔軟に連携することが重視されている実態にも触れた。
ただ見過ごせない点もある。
米軍基地の移転や訓練の分散先に日本国内も含めていることだ。
道内では既に在沖縄米海兵隊の輸送機オスプレイが参加した訓練などが実施されている。
「沖縄の負担軽減」を名目に、その実効性が伴わないまま、米軍の活動範囲だけが拡大している懸念が拭えない。
移転・分散には慎重さが求められよう。
辺野古移設を巡っては、国と県との間で裁判闘争が続いている。このままでは出口は見えない。
今回の提言を対立を終えるきっかけにしてもらいたい。