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検察官の勤務延長の特例などを定める検察庁法改正案が国会に提出された。内閣による人事介入を可能にする仕組みが盛り込まれている。検察の独立性、中立性を脅かす恐れが強い。特例措置については撤回すべきだ。
改正案は検察官の定年を63歳から65歳に引き上げることを柱とする。60歳から65歳に定年を引き上げる国家公務員法改正案と合わせた「束ね法案」として13日に閣議決定された。それによると、最高検の次長検事、高検の検事長は63歳に達した日の翌日に役職を降ろし「検事」に任命される。そこまではいい。
問題なのは「当該次長検事又は検事長の職務の遂行上の特別の事情を勘案して(中略)内閣が定める事由があると認めるとき」はそのまま勤務を続けさせることができる旨の特例を定めている点だ。
この仕組みを使えば、政権の息のかかった次長検事や検事長は引き続きその職にとどめ、そうでない人はポストから外すことが可能になる。
あらゆる犯罪を捜査でき、被疑者を起訴するかどうかを決定する権限を持っているのが検察官だ。その職務と責任の特殊性から、裁判官に準ずる身分が保障されてきた。
場合によっては首相の犯罪に切り込むこともある。いかなる政治勢力からも距離を置いた存在であるべきだし、その方が国民の利益にかなう。強大な権限を有するからこそ、厳正公平、不偏不党の姿勢が何よりも求められる。
内閣から評価されないと出世できないという空気が醸成されれば、政権の立場を忖度(そんたく)する茶坊主的な幹部が幅を利かせるようになるのではないか。政権やその周辺の捜査に手心を加える一方で、権力側にとって不都合な相手への摘発には力を入れるといった風潮さえ生まれかねない。
森友学園問題などへの対応を見ると、既にその兆候が現れているのではないかとの疑念も浮かぶ。
昨年秋に内閣法制局が了承した当初の改正案に特例措置の規定はなかった。当時、法務省は、特例がなくても公務の運営に著しい支障が生じることは考え難い―との見解をまとめていたのだ。国会審議の中で明らかになっている。
それなのになぜ、後になって勤務延長を盛り込んだのか。検察庁法に反して黒川弘務東京高検検事長の勤務を延長した閣議決定とつじつまを合わせ、法解釈の変更を正当化、合法化するためだと考えれば合点がいく。
安倍晋三首相は16日の参院予算委員会で、山添拓氏(共産)から「検察上層部の人事に露骨に介入しようとするものだ」と追及され、「恣意(しい)的に、政治的に人事に介入することは絶対にない」と答弁した。その言葉が本当なら特例を設ける必要など全くない。
法務省の当初の見解も特例措置は不要としていた。検察の中立性を損ねる恐れのある法改正は見直すべきだ。