[大弦小弦]異例の春と旅立ちの決意 - 沖縄タイムス(2020年3月5日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/542921
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卒業式シーズン真っただ中。1日にあった県立高校の卒業式は新型肺炎の影響で規模が縮小されるなど静かな門出となったが、卒業生たちは新たな旅立ちへの決意を固めていた

▼小中学生時代に不登校となり、その後、ひきこもりの日々を経験した古波あやかさん(25)=名護市=も北部農林高校定時制を卒業した。高校入学は21歳の時。農業の面白さを知り、4年間1日も休まず通い続けた

▼昨年あった高校定時制通信制生徒生活体験発表大会にも出場した。「自分への挑戦」と題し、「遠回りだったかもしれない。しかしこの道でしかできない経験、たくさんの出会いが私を大きく変え、今までの人生の全てを輝かせてくれた」などと発表した。卒業後は琉球大学農学部に進学。教員になる新たな目標に一歩踏み出す

▼きょう5日は、二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」。季節の変わり目で、地中で冬ごもりしていた虫たちが、春の訪れを感じて目を覚ます頃とされている

▼自然界の息吹と呼応するように卒業、進学就職、人事異動など人生にとっても節目の時期だ。新たな挑戦を前に不安を抱えている人も多いかもしれない

▼例年とは違い、自粛ムードが広がる異例の春だが、啓蟄の「啓」には「ひらく」の意味がある。人生のプロセスに試練はつきものだが、温かい春の風がきっと背中を押してくれる。(吉川毅)