https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/541537
http://web.archive.org/web/20200302001341/https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/541537
五輪の聖火リレーはナチスドイツが考案した。1936年、ギリシャで採った火を開催地のベルリンまで運ぶ様子を宣伝し、国威発揚に使った
▼東京五輪のリレーは今月始まる。ここに来て、組織委員会が変なことを言い始めた。沿道から撮影した動画はSNSに投稿してはいけない、見つけたら削除を要請するという。ナチス時代にはなかった放映権ビジネスで、放送局に配慮した
▼しかし、競技会場と違って天下の公道は貸し切りではないし、入場の約束事もない。民間団体である組織委が通行人に指図する根拠は不明だ
▼大会の機運を高めるリレーも、商業主義が行き過ぎればスポンサー企業のためだけのイベントになる。ただでさえスポンサー枠で走者が決まり、発着点に営業所が選ばれている
▼64年の前回東京大会で、米軍支配下にあった沖縄はリレーを迎え、復帰への思いを託した。感慨を抱く人も多いが、今回はだいぶ違う光景になりそうだ。先頭はスポンサーのトラック。音楽を流し商品を宣伝するという。平和祈念公園など、控えるべき場所があるだろう
▼出発点になる福島県には「原発災害が終わったことにされる」警戒感もある。日本でなぜか「聖火」と呼ばれるあの火は、外国語では単に「五輪の火」。過剰にありがたがっていると、大事なことを見落としそうだ。(阿部岳)