米軍ヘリ構造物落下 つり下げ輸送恒久中止を - 琉球新報(2020年2月27日)

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米軍基地の存在が県民の安全を脅かしている現実をまざまざと思い知らされる。
在沖米海兵隊のCH53E大型輸送ヘリコプターが、つり下げて輸送していた鉄製の構造物をトリイ通信施設(読谷村)の西約1・3キロの海上に落下させたのである。
飛行中に不安定な状態になり「乗組員の安全を確保するために意図的に投下した」と第1海兵航空団は説明している。危険物や有害物質は含まれていないという。地上の地対空ミサイルシステムを模した鉄製の標的だった。
米軍は「投下前に周辺に船舶や民間人がいないことを確かめた」と主張するが、額面通りには受け取れない。
機体の安定が保てなくなるような緊急事態に陥ったとき、地上や海上の状況を確認する余裕があるとは思えないからだ。まずは乗員の安全を優先して対処するだろう。
読谷村では1965年、小学5年の女児が米軍のパラシュート訓練で投下されたトレーラーの下敷きになり、死亡する事故が起きている。
今回も一歩間違えれば大惨事につながりかねないところだ。落下地点は都屋漁港の沖合で、近くには漁場がある。
 投下しなければならないほど差し迫った状態になったのはなぜか。どれくらいの重さだったのか。つり下げ方が不適切だったのか。詳細は明らかにされていない。情報の開示に消極的な米軍の態度は、彼らがたびたび口にする「良き隣人」とは程遠い。
米軍は、原因を究明するまで同じような物体のつり下げ輸送を停止すると発表したが、到底納得できない。
安全が保証されず、県民の不安が払拭(ふっしょく)されない以上、ヘリによる重量物のつり下げ輸送は恒久的に中止すべきだ。
今回のような重量物の落下は2006年12月にも起きている。米海兵隊のCH53E大型輸送ヘリがつり下げていた廃車をトリイ通信施設の沖合約200メートルの海上に投下した。米軍は「ヘリが乱気流に遭い、乗員とヘリの安全確保のため荷物を投下しなければならなかった」と説明した。
当時は、発生した翌日にトリイ通信施設の司令官が読谷村役場を訪ねて村長に謝罪している。今回、そのような表立った動きは見られない。米軍の増長ぶりは目に余る。
防衛省や外務省は、米軍の傍若無人な振る舞いを放置してはならない。主権国家として毅然(きぜん)とした姿勢を示し、強く抗議すべきだ。
「落下場所が海域ではなく陸域だったらと思うとぞっとする」という石嶺伝実読谷村長の言葉は切実だ。
つり下げ輸送に際して何らかの不手際があったのか。あるいは、適切な手順を踏んでいても投下せざるを得ない状況が起き得るのだろうか。そうであれば、県民は安心して生活できない。
こうした点を含め、基地を提供する日本政府には、県民に説明する責務がある。