<金口木舌>「サンマ」を訴えたのは誰か - 琉球新報(2020年2月6日)

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サンマは秋だけが旬かと思っていたら、三重県熊野市では脂が抜けた冬のサンマをめでる。店先にサンマをつるして干す風景は「銀すだれ」としてこの時期の風物詩だ

▼大衆魚として愛されるサンマだが、近年は水揚げ量が落ち昨年は過去最低で、もはや「高級魚」だ。昨秋の「目黒のさんま祭り」では生サンマが調達できるか関係者が気をもんだが、今年の熊野市は県外産となった
▼沖縄でも日本復帰前からサンマは外から「輸入」して食した。布令で課税対象に入っていない輸入サンマの物品税の還付を求めて鮮魚輸入業者が琉球政府を訴えたのが「サンマ裁判」だ
▼1審は原告の輸入業者が勝訴するが、これに関連して米高等弁務官がサンマも課税対象にと布令を変更したことで第2次サンマ裁判が提起され、高等弁務官は裁判所を琉球政府から米民政府へ移送を命じた。これが司法権自治権の侵害だとして人々の大きな反発につながっていく
▼当時の沖縄に民主主義はあったのか。そんな武骨なテーマをコミカルに描いた沖縄テレビ放送の「サンマ・デモクラシー」が8、11日に、一部の局を除く全国で放送される
▼あれから沖縄は、日本は、変わったか。あるものをないと言ってはばからない官僚に、法律も都合よく解釈して自衛隊を海外に派遣する政治家たち。「骨抜き」のデモクラシーでは経世済民は望めない。