https://www.asahi.com/articles/DA3S14272377.html
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離婚などによるひとり親家庭で、子どもの成長を支えるのが養育費だ。ところが支払いを取り決めないケースが多いうえ、約束しながら払われない例も少なくない。教育をはじめ子どもの権利を脅かしかねないだけに、対策が急務である。
兵庫県明石市の独自の試みが、この問題に一石を投じている。不払い時に市が立て替え、支払い義務のある親から回収する。応じない場合、悪質なら行政罰である過料を科し、さらに氏名も公表できるようにする。海外の事例も参考に、そんな国内で例を見ない制度を検討していくことになった。
市は5年前、離婚届とセットで養育費支払いのための合意書を配布し始めた。口約束でなく書面を交わすよう促すのが狙いだ。昨秋からは支払い保証業務を手がける民間企業と連携して保証料を一部負担しており、今回はそれに続く対応となる。
市は当初、過料や氏名公表を含む十数項目を対策の案として挙げつつ、来年度からの実施を目指した。しかし意見を諮った有識者会議から慎重な声が出て、氏名公表などを「最後の手段」と位置づけ直し、実施時期も1年遅らせることにした。
養育費不払いという私人同士のトラブルに行政がどこまで、どんな手段で介入することが適当か。不払い分立て替えの元手は税金だけに、その金額や期間をどう定めるか。課題は多いが、子どもの立場にたって精力的に検討してほしい。
対策に乗り出したのは明石市だけではない。大阪市や滋賀県湖南市は、支払いを取り決める公正証書の作成や民間保証会社の利用に助成金を出している。広く自治体間で情報を交換するのも有益だろう。
もちろん、国も手をこまねいていてはならない。
来春には改正民事執行法が施行され、養育費などの支払いが滞った時、公正証書などに基づいて、裁判所を介して支払い義務者の給与や資産に関する情報を入手しやすくなる。
ただ、それでも支払いを得るために要する時間や金銭の負担は小さくない。明石市などの取り組みは国の先を行く問題提起と受け止めるべきだ。養育費の算定基準が年末にも増額へと改定される見通しだが、手厚くしても支払われないのでは意味がない。
厚生労働省の16年度の調査によると、養育費の支払いを受けたことがない母子家庭が5割を超えている。日本は先進国のなかで、子どものいる大人ひとり世帯の貧困率が最悪水準だとする国際調査もある。
養育費の不払いを当事者任せにしておくわけにはいかない。