[大弦小弦]きょうの空を見て考える平和 - 沖縄タイムス(2019年10月10日)

https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/482108
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1964年の10月10日は、平和の祭典、東京五輪の開会式が行われた日だ。なぜ、この日なのかについては諸説あるようだが、「晴れる確率の高い日」だからと関係者は証言している

▼気象情報会社ウェザーニューズが、81年から30年間の10月10日の天気を調べた結果、晴れの出現率は東京で70%、那覇でも63・3%と高かった

▼75年前の沖縄も秋晴れだった。米軍の大規模な無差別爆撃「10・10空襲」は、本島や周辺離島などを襲い、軍民合わせて死者668人を含む約1500人の死傷者を出した。旧那覇市の9割が焼失。日本の軍事拠点の破壊と沖縄の地形空撮が目的で、翌年の地上戦の「序章」だった

▼名護市山田区で私設の戦争博物館を開く眞嘉比朝政さん(82)も、あの日の空を鮮明に覚えている。小学生になったばかりで、名護の空にアリの群れのように現れた米軍艦載機グラマンを見た。空襲警報の中、無我夢中で逃げた恐怖は忘れられないという

沖縄戦で、父は召集されて南部で戦死。自身も栄養失調で死線をさまよった。戦後も母と兄、2人の妹と苦しい日々だった

▼「戦争はみじめ」と語る眞嘉比さんの博物館には、空襲を伝える当時の新聞や戦争遺品が並ぶ。博物館の看板は、「戦争」の文字を逆さにして戦争反対の思いを込める。きょうの沖縄地方も晴れの予報だ。(吉川毅)