厚労政務官 辞任で幕引き許されぬ - 朝日新聞(2019年8月30日)

https://www.asahi.com/articles/DA3S14157766.html
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厚生労働省上野宏史政務官が突然、辞任した。外国人労働者在留資格取得をめぐる口利き疑惑を、週刊誌で報じられたためだ。
上野氏は「法令に反する口利きをした事実はない」などとする1枚紙のコメントを出しただけで、記者会見など公の場での説明を一切していない。疑惑は残ったままで、政務官を辞めたからと言ってうやむやにはできない。
ましてや外国人労働者の受け入れは、安倍政権の肝いりで拡大しているさなかだ。その看板政策に関わる問題で、政府の人間が私腹を肥やそうとしていたのなら、とんでもない話だ。
議員本人に説明責任があるのは当然だが、政府・与党としてもきちんと調査をし、厳正に対処すべきだ。
上野氏は経済産業省出身。自民党で首相の出身派閥の細田派に所属し、昨年10月、厚労政務官に就いた。労働政策などを担当し、外国人技能実習制度の見直しに向けた検討チームのトップも務めてきた。
先週発売の週刊文春で、東京都内の人材派遣会社が法務省に申請した外国人の在留資格認定証明書が、迅速に交付されるよう法務省に働きかける見返りに、1件につき2万円を会社側から受け取るかのようなやりとりを、元秘書としていたことが報じられた。
実際に働きかけて見返りに報酬を得ていたなら、あっせん利得処罰法に問われかねない。働きかけの実態がないのに、あたかも自分のおかげで証明書が迅速に交付されたように思わせて見返りを得ようとしたのなら、詐欺まがいの所業だ。
だが、この報道以降、上野氏は役所に姿を見せず、報道各社の取材にも応じていない。不誠実極まりなく、国会議員としての資質も疑われる態度と言うほかない。
根本匠厚労相は記者会見で「一議員としての政治活動に関する報道」と述べ、ひとごとのような姿勢だ。しかし労働行政を担当する政務官と人材派遣会社をめぐる今回の疑惑は、厚労行政への信頼も大きく傷つけるものだ。厚労省としてもしっかり調査すべきである。
週刊誌などの報道では、上野氏が口利きの見返りを、自民党員の党費に充てようとしていた疑いも出ている。上野氏が集めた党員が、本当に党員としての実態があったのか。自民党も厳しく調べるべきだ。
安倍内閣では、閣僚らの口利き疑惑が後を絶たない。首相側近の甘利明・元経済再生相、片山さつき・地方創生相もいまだに説明責任を果たしていない。政権の姿勢が問われている。