<金口木舌>しまくとぅば未来を築く - 琉球新報(2019年6月26日)

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しまくとぅばは県民の心にしみるものだと改めて思う。同じ内容でもやまとぅぐちでは頭での理解にとどまる。23日の沖縄全戦没者追悼式で玉城デニー知事が発表した「平和宣言」は、しまくとぅばが絶大な効果を生んだ

▼例えば「幾世(いちぬゆー)までぃん悲惨(あわりくり)さる戦争(いくさ)ぬねーらん 心安(くくるや)しく暮(く)らさりーる世界(しけー)んでぃし、皆(んな)さーに構築(ちゅくてぃ)いかんとーないびらん」のくだり。やまとぅぐちでは「いつまでも平和で安心した世界をみんなで築いていかなければなりません」となる
▼しまくとぅばの方が胸に響く。県民は「あんやさやあ」とうなずく。やまとぅぐちでは、こうはいくまい。そういえば空疎なやまとぅぐちを追悼式で聞いた。安倍晋三首相の「沖縄の基地負担軽減に全力を尽くしてまいります」である
▼記憶に残る名文句もある。2015年の県民大会で翁長雄志前知事が発した「うちなーんちゅ うしぇーてーないびらんどー」は代表格。新基地建設に反対する県民の心を震わせた
沖縄戦では、しまくとぅばで投降を呼び掛けた県系二世の米兵がいた。日本軍はしまくとぅばを使う住民を敵のスパイと見なし、処刑の対象とした。しまくとぅばに救われた命があり、脅かされる命もあった
▼しまくとぅばで戦場の悲しみを語る。三線の音に乗せ、歌う。戦後74年、平和を願う県民の営みだ。それは沖縄の未来を築く営みでもある。