https://mainichi.jp/articles/20190622/ddm/005/070/024000c
http://archive.today/2019.06.22-011730/https://mainichi.jp/articles/20190622/ddm/005/070/024000c
政府が経済財政運営の基本方針(骨太の方針)を閣議決定した。最大のテーマは長寿化の進展に伴う人生100年時代への対応である。
「誰もがいくつになっても活躍できる社会づくりを目指す」という。予防医療・健康づくりの推進などで健康寿命を延ばすとともに、70歳までの就業機会を確保することなどをうたっている。
高齢になっても働き続けたい意欲を持つ人は増えており、国がそれを後押しするのは時代の要請だろう。
だが、明るい面ばかりでない。寿命が延びれば、それに応じて、老後生活への不安も膨らむだけに、その対応策も必須だ。
にもかかわらず、そうした不安に向き合おうとしていない。高齢者にも働いてもらって、年金や医療など社会保障の支え手を広げる利点が強調されているだけだ。
「骨太の方針」は小泉純一郎政権が2001年に導入した。首相が議長を務める経済財政諮問会議で閣僚や民間メンバーが議論して策定する。財務省と各省庁との調整を基に経済政策や予算が策定されるプロセスを改め、官邸主導の大胆な政策決定と予算配分を行うのが狙いだ。
「改革なくして成長なし」を掲げた小泉政権時代には、毎年度の「骨太の方針」に盛り込む施策について、閣僚や民間メンバーが激しい議論を闘わせた。財政健全化をめぐっては、歳出削減論者と増税論者のバトルも展開された。その結果、練り上げられた施策が盛り込まれ、国民の注目を集めた。
第2次安倍政権になって、ダイナミズムが失われている。安倍政権はアベノミクスの一環で「600兆円経済への道筋」や、「1億総活躍社会」などのキャッチフレーズを毎年打ち出している。「骨太の方針」もこれに縛られ、諮問会議でも激しい議論が行われる場面はほとんど見られなくなった。
しかも、「経済成長すれば財政問題も解決する」との理屈で、社会保障費の抑制など痛みを伴う改革を先送りしてきた。安倍政権による「骨太の方針」の策定は7回目となるが、今回も耳当たりの良いキャッチフレーズが並ぶ一方で、難題に切り込まなかった。骨太の方針は形骸化が進むばかりだ。