<金口木舌>お金と時代、民の歴史 - 琉球新報(2019年5月15日)

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一時、新紙幣の周辺がざわついた。5千円札は津田梅子の肖像が元の写真と左右逆だと指摘された。安倍晋三首相の本命という1万円札の渋沢栄一はお隣韓国の反発を招いた

▼渋沢は「日本の帝国主義時代に朝鮮半島の経済を奪い取った主役だった」というのだ。「安倍政権の歴史修正主義が反映された可能性がある」との見方も。「日本の資本主義の父」も、韓国での評価は逆だ
▼沖縄はきょう、復帰47年の日を迎えた。復帰で初めて目にした日本のお札は板垣退助の百円札、岩倉具視五百円札伊藤博文の千円札だった。ヤマトの新札は独特の香りがした。子供心に世替わりを感じた
▼2000年には守礼門を刷った2千円札がお目見えした。本紙社説は流通を見込み「目に見えない役割を果たしてくれるに違いない」と論じたが、期待は外れた。不遇な扱いに沖縄の現状と重ねてしまう
▼オーストラリアではユニークな硬貨が登場した。絶滅の危機にある先住民14言語を刻んだ50セント硬貨が発行されたとCNNのホームページが報じた。国連の「国際先住民族言語年」に合わせた取り組みという
▼硬貨発行に携わった先住民研究機関は「わが国を形作ってきた多様な文化を改めて認識する契機になる」とコメントした。苦難の歴史を歩む民の尊厳を守る姿勢を感じる。日本はどうか。復帰の日、彼我の落差にため息が出る。