こどもの日 命守る取り組み広げて - 北海道新聞(2019年5月5日)

https://www.hokkaido-np.co.jp/article/302250
http://archive.today/2019.05.05-005206/https://www.hokkaido-np.co.jp/article/302250

少子高齢化が加速し、子どもの健やかな成長は、親だけでなく社会全体の願いだろう。
平成を通じ、虐待やいじめ、貧困など、子どもへの人権侵害が次々に明らかになった。
学校や家庭が抱え込んできた問題が、ようやく社会で共有されるようになったとも言えよう。
とりわけ日本では、先進国でも突出して子どもの自殺が多い。
きょうは「こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかる」ための「こどもの日」である。
この機会に改めて、周囲の子どもたちが深刻な状況に置かれていないか、注意深く見守りたい。
国内の自殺者が2003年をピークに4割近く減る一方、若年層は高止まりが目立つ。
事故やがんで亡くなるのを上回る数の子どもや若者が、自殺に追い込まれる―。先進7カ国で唯一、そんな状況が続いている。
特に、10代は、平成に入って以降、改善の兆しがみられない。
17年の人口動態統計では、10代前半まで自殺が死因の1位になった。戦後初の事態であり、対策を急ぐ必要がある。
政府は17年に自殺総合対策大綱を改定し、各地域の実践的な取り組みの支援を強化した。
子どもの自殺予防で注目されるのが「SOSの出し方教育」だ。
命の大切さだけでなく、つらいときには弱音を吐くことを教え、周囲に打ち明けやすい環境をつくって、孤立を防ぐ。
「相談すれば助けてもらえる」と思ってもらうことが大切だ。
スクールカウンセラーや相談窓口の拡充、子ども食堂などの居場所づくりに加え、SOSに気付き、支援につなぐ「ゲートキーパー」の役目を果たせる大人を、身近に増やしていきたい。
予防には、原因を掘り下げる作業も欠かせない。
10代前半の自殺の原因は、しつけや叱責(しっせき)、家族や友人との不和、学業不振などが挙げられるが、動機不明の比率が極めて高い。
保護者や教員などが自殺の予兆についての知識を得ると同時に、子どもとの関わり方について学び直す姿勢も求められる。
いじめ自殺が示す通り、周囲が見て見ぬふりをすれば子どもは行き場を失う。近くにいる大人こそ、SOSへの感度を高めたい。
間もなく大型連休が明ける。子どもの自殺の増える時期だ。
いつもと少し様子の違う子どもがいたら、まず、じっくりと話に耳を傾けよう。