夜間中学語る会に前川氏 セーラー服歌人と「学び」語る - 朝日新聞(2018年3月19日)

https://digital.asahi.com/articles/ASL3K01SYL3JUTIL078.html
http://archive.today/2018.03.19-002512/https://www.asahi.com/articles/ASL3K01SYL3JUTIL078.html

学習する機会を十分得られなかった人々が通う「夜間中学」。その大切さを語り合う会が18日、千代田区専修大学で開かれた。登壇したのは前文部科学事務次官前川喜平さんと、学びたくても学べない人がいることをセーラー服を着ることで訴える歌人の鳥居さん。2人を結びつけたのは夜間中学への思いだった。
前川さんは在任中、夜間中学の充実を目指す「教育機会確保法」の制定に関わった。「天下り」問題で辞職時に全職員に送ったメールでも「就学機会の整備が本格的に始まることは、私にとって大きな喜び」とふれた。いま神奈川、福島両県の自主夜間中学でボランティアの講師をしている。
鳥居さんは「小学生のとき、母を自殺で亡くし、児童養護施設で虐待を受け、学校に行けなかった」と語る。中学にほとんど登校していなくても卒業認定されたことを理由に、自治体の夜間中学に受け入れてもらえなかった。だが、2015年に文科省が通知を出して入学が可能になり、夜間中学に通っている。
鳥居さんは昨春、前川さんの退職時のメールを読み、会いたいと思うようになった。一方、前川さんは昨秋、鳥居さんを知るバーの主人から歌集を渡されて鳥居さんの思いを伝えられ、やはり会って話したいと思った。そのことを知った憲法を考える市民グループ「Feel9(フィールナイン)」のメンバーが引き合わせ、今回の会を企画し主催した。
会では、鳥居さんが〈慰めに「勉強など」と人は言う その勉強がしたかったのです〉という自作を紹介。「中学生としての日常は無理だが、勉強だけでも取り戻したいと夜間中学に通っている」と語った。
前川さんは「学校に行きたくても行けない人を文科省は見て見ぬふりをしてきた」とし、「国はすべての人に無償の普通教育を保障すべきだ」と話した。
前川さんの名古屋市立中学校での講演をめぐり、文科省が市教育委員会に内容を問い合わせ、録音データの提供を求めていたことも話題になった。
鳥居さんが「文科省、最近、ちょっとこわい」と言うと、「きょうはいないんじゃないですか」と前川さん。会場から笑いが起きた。前川さんはその中学校での授業について紹介。夜間中学は何かを説明し、さらに「大人の言うことを信じちゃいけない。自分の頭で考えることが大切だ」と呼びかけたと話した。(編集委員・氏岡真弓)