[普天間爆音訴訟判決]「住民救済」大きく後退 - 沖縄タイムス(2019年4月17日)

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現実に違法な被害が継続しているにもかかわらず、これをどう解消するかという切実な問題意識が感じられない。
米軍普天間飛行場の周辺住民3400人余が、米軍機の飛行差し止めと騒音被害の賠償などを求めた第2次普天間爆音訴訟の控訴審判決で、福岡高裁那覇支部は、国に約21億2100万円の賠償を命じた。
一審に引き続き爆音の違法性は認めたものの、一審判決の賠償額約24億5800万円を大きく下回った。1次訴訟の確定判決に比べても賠償額が大幅に減額されている。
全国各地の爆音訴訟で示された被害認定の水準を後退させる判決である。
原告住民が切実に求めたのは、夜間・早朝の飛行差し止めだった。だが、判決は全国各地の爆音訴訟同様、「政府は米軍機の運航を規制し、制限することのできる立場にない」との第三者行為論を持ち出し、請求を退けた。
将来生じる被害の賠償についても、一審に続いて認めていない。
判決は普天間飛行場を巡る現状について「原告らを含む一部少数者に特別の犠牲が強いられている」と指摘。この状態を「看過することのできない不公平」だと強調する。
では、どうするか。
違法な爆音によって日常生活のさまざまな面で深刻な被害を受けているというのに、国は抜本的な対策を取らず、判決も国の不作為や怠慢を追及していない。
司法の限界をまざまざと示した判決だ。

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第1次普天間爆音訴訟は、受忍限度を超える違法な被害が生じていることを認定し、2011年10月、国に損害賠償を命じる判決が確定した。 第2次普天間爆音訴訟の一審判決が出たのは16年11月のことである。その間、政府は何をやったのか。
第2次訴訟の一審判決要旨は、「被害防止対策に特段の変化は見られず、周辺住民に生じている違法な被害が漫然と放置されている」と厳しく指摘した。
司法の矜持(きょうじ)を示したと言っていい。
だが、第2次訴訟の控訴審の判決要旨には、「違法な被害が漫然と放置されている」との文言が見当たらない。
一審判決要旨と同じように、11年10月に1次訴訟の判決が確定したことに触れながら、一審判決要旨にあった重要な指摘が抜け落ちているのである。
何かがあったことを伺わせるような変化だ。

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福岡高裁那覇支部の判決は、騒音による健康被害について、心理的負担や精神的苦痛、睡眠妨害、ストレスによる血圧上昇などを認めている。
しかし、虚血性心疾患のリスクの上昇、低出生体重児の増加、学童の長期記憶力の低下、低周波音による被害などについては、いずれも「事実を認めるに足りる証拠はない」と否定している。
判決後の会見で、原告側は最高裁に上告して争う考えを明らかにした。健康被害の実態や健康上の悪影響のリスクをより明確に立証していくことが求められる。