<金口木舌>行動する国際政治学者 - 琉球新報(2019年4月9日)

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最初の出会いは図書館で読んだ本だった。膨大な資料を駆使し、日米関係や米軍基地問題を明快に読み解いた。宮里政玄さんは沖縄の現実と未来を多角的に論じる、歩く「学術書」のような人と感じた

▼1966年刊の「アメリカの沖縄統治」は代表作。「アメリカの基本政策、アメリカの沖縄統治政策の特徴、沖縄人の行動様式をうきぼりにしたい」と前書きに記した。若き国際政治学者の気概がほとばしる
学術書のようだが、本棚に収まらない。行動する学者だった。代表や顧問を務めた「沖縄対外問題研究会」は日米両政府と対峙(たいじ)する論陣を張った
▼沖縄の意思を表明する共同声明の賛同人にも名を連ねた。文案を巡って、同じ賛同人の大城立裕さんとの間で意見を交わしたという。「首里のコンビだよ」と大城さんは話しておられた。沖縄を見つめてきた作家と政治学者の対話を想像する
▼14年前、敗戦直後の米統治に関する原稿をいただいた。その際、担当者が考えた見出しの過ちを指摘し、当時の日米関係を解説してくれた。受話器を握る手が汗ばみ、背筋が伸びた
▼1年前、沖縄を取り上げた本土知識人の雑誌対談に疑問を呈し「沖縄は反論すべきだ」とつづった文章を本紙に寄せた。沖縄に同情する態度を見せながら行動しない者への憤りだった。沖縄に立脚し、国際政治を論じた碩学(せきがく)の矜持(きょうじ)を忘れまい。