施行3年の安保法 「専守」の骨抜きが続く - 東京新聞(2019年3月28日)

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安全保障関連法に基づき、自衛隊の活動を広げる安倍政権。施行から三年がたち、私たちの眼前には、専守防衛憲法理念とは懸け離れた姿が広がる。
安倍政権が「平和安全法制」と呼ぶ安全保障関連法の施行からあす二十九日で三年がたつ。
歴代内閣が「憲法上許されない」としてきた「集団的自衛権の行使」を可能とする内容は、憲法違反の疑いが指摘され、全国各地で違憲訴訟が起きているが、安倍内閣は意に介さず、むしろ安保法を既成事実化し、専守防衛という憲法理念を骨抜きにするかのような動きを強めている。見過ごすわけにいかないのは当然だ。

◆日米軍事一体化が進む
安保法に基づいて格段に進んだのは日米の軍事的一体化だろう。「専守防衛」を貫いてきた自衛隊にとって、米軍とともに戦う「軍事組織」への変質である。
安倍晋三首相は「日米同盟は平和安全法制でお互いに守り合うことができる同盟になった」と、安保法の意義を強調する。
「お互いに守り合う」とは「集団的自衛権の行使」を指す。日本が直接攻撃されていなくても、密接な関係にある米国への攻撃を実力で阻止できれば、米国との信頼の絆は強まるという理屈だ。
米英関係などと同様の、お互いに血を流す「血の同盟」である。
安保法の施行後三年間で、そうした事態は実際には起きてはいないが、自衛隊が米軍の艦艇や航空機を警護する「武器等防護」の実施は二〇一八年に十六件と、一七年の二件から八倍に急増した。
安保法で可能になった平時の活動だとしても、米軍が攻撃されれば、自衛隊が反撃する可能性もある任務だ。他国同士の戦争に巻き込まれかねない米軍と一体となった活動が、憲法九条に基づく専守防衛の範囲内と言えるのか。

憲法が禁じる空母まで
憲法規範の崩壊は、それだけにとどまらない。
政府は、エジプトのシナイ半島イスラエル、エジプト両国軍の停戦監視を行う「多国籍軍・監視団(MFO)」の司令部要員として、四月中旬から自衛官二人を派遣する方針を決めた。
MFOは国連が統括しない米軍中心の軍事的活動である。国連以外の国際機関の要請でも自衛隊が派遣できるよう、安保法で新設された「国際連携平和安全活動」の初めての適用となる。
人的な国際貢献の必要性は認めるが、国連が統括しない軍事的活動への関与は、慎重に進めるべきだろう。当初は司令部要員の派遣にとどまるが、いずれ部隊派遣につながり、危険な活動に深入りするきっかけになりかねない。
ましてや米軍中心の活動だ。なぜいま、という疑問も拭い切れない。安保法適用の実績をつくり、既成事実化する狙いがあるとすれば、強引にすぎないか。
一六年三月の安保法施行後、安倍内閣の下では、専守防衛を骨抜きにする動きが加速している。
政府が昨年十二月十八日に閣議決定した「防衛計画の大綱(防衛大綱)」や「中期防衛力整備計画(中期防)」には「スタンド・オフ火力」の整備や、ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」型の事実上の「空母」化が盛り込まれた。
スタンド・オフ火力は相手の攻撃が届かない場所から攻撃できる長距離巡航ミサイルを指し、首相は「隊員の安全を確保しつつ、わが国の防衛に万全を期すために必要不可欠」と必要性を説く。
しかし、日本の領空から発射しても、例えば、朝鮮半島内陸部まで届く射程の長いミサイルだ。平生から他国を攻撃するような、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持てないとする憲法の趣旨に反するのではないか。
事実上の「空母」化も同様だ。通常はヘリコプターを載せる「いずも」型護衛艦を短距離離陸・垂直離陸が可能な戦闘機F35Bを搭載できるよう改修するものだが、憲法保有できない攻撃型空母に該当する恐れはないのか。
空母について国際的に確立した定義はないとか、米空母と異なるという説明は詭弁(きべん)だ。

◆防衛費7年連続で増加
戦後日本の安全保障政策を貫く憲法九条の「専守防衛」は、多大な犠牲を出した先の大戦に対する痛切な反省に基づくもので、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないという誓いでもある。
首相は「わが国防衛の基本方針である専守防衛はいささかも変わることはない」と述べているが、安保法施行後の防衛政策を見ると額面通りには受け取れない。防衛費も七年連続で増額されている。
施行から三年がたっても、安保法の憲法適合性や、防衛政策の妥当性は常に問われ続けるべきだ。専守防衛のタガの緩みは締め直さねばならない。