新指導要領の教科書 考える授業の実現手段に - 毎日新聞(2019年3月27日)

https://mainichi.jp/articles/20190327/ddm/005/070/095000c
http://archive.today/2019.03.27-021713/https://mainichi.jp/articles/20190327/ddm/005/070/095000c

2020年度から使われる小学校教科書の検定結果が公表された。
最大の特徴は、討論などを重視する「主体的・対話的で深い学び」(アクティブラーニング)を実践する新学習指導要領対応の初の教科書が誕生したことだ。
アクティブラーニングは全教科で対応する。記述も詳細だ。例えば、6年の算数では4人分のカレーを作る材料と鍋の大きさを示し、1000人分作るための材料の準備やどのくらいの大きさの鍋が必要かなどを児童に話し合わせる。学級で議論し、考えさせる授業を促す記述だ。
詰め込み型の知識偏重を転換し考えて行動する人材の育成が狙いだ。
だが、教科書通りでは型にはまった授業になりかねない。また、調べたり議論したりするのは手間がかかる。全ての単元で教科書を完全に消化しようとすれば時間は足りない。
すでに時間割はいっぱいで子供の負担は増している。なにより「完全消化」は考えさせる授業を阻害する「詰め込み」になる。学級や子供の状況に応じて授業を組み立て教科書を活用することが教師の役割だ。
もう一つの特徴は、高学年で英語が教科になり、プログラミング教育も加わるなど、全教科の平均ページ数が、今より14%も増えたことだ。「ゆとり」教育からの脱却を目指した現行の指導要領導入時(11年度)と比べると5割近くも増している。
「教科書を教える」のでなく「教科書で教える」工夫がより重要だ。
英語やプログラミングといった、教員が指導に慣れない教科や題材への不安を拭う必要もある。
英語では、計600~700語を学ぶ。教科書会社は、絵やイラストを多用するなど英語が苦手な教員も取り組みやすくしたという。理科では電気の学習で、照明のセンサーの仕組みからプログラミングを学ぶなど、生活に密着した題材を使う。
教科書にQRコードを印刷し、タブレットなどで読み込むと音声が出たり、実験器具の使い方などを動画で見せたりもする。教員を支援し、児童の理解を助ける、このような工夫は積極的に進めてほしい。
平成の学校教育は「ゆとり」「反ゆとり」に大きく揺れた。次の時代は、この対立を超え「考えることを重視する授業」の定着を望みたい。